予測ができないからこそ面白い「株式投資」
前回の記事では、「損失の嫌悪」「塩漬け株」という言葉が出てきました。
「損失の嫌悪」というのは、人間の心理や選好と経済合理的な行動について研究する行動経済学の用語で、これらは、2002年に心理学者、行動経済学者であるダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)のノーベル経済学賞の受賞をきっかけに注目されてきました。
『人々は、現実に今損するか得するかを重要視する傾向が高い。だから不必要に損失を恐れる傾向にある。もちろん損失を重視することで、利益を無駄に追いかけすぎるよりは得になるかもしれない。しかし損失に対して過敏になりすぎると好機そのものまで見失ってしまう』(「人はなぜお金で失敗するのか」G・ベルスキー&T・ギロヴィッチ著、鬼澤忍訳、日経ビジネス文庫)
という言葉にもみられるように、私たちは、損を嫌がる習性があるようです。まさに、得する喜びよりも失う痛みのほうを強く感じてしまうからかもしれません。
でも、古くからのことわざに「損して徳(得)とれ」という言葉もあります。損に関しては、「損して利を見よ」「損せぬ人に儲けなし」「損は儲けの始め」「一文惜しみの百知らず」などもあり、日本人には、目先の損ではなく、もう少し長い目で、全体的に見ようという教えがあるのだと思います。
損が好きな人はいないでしょうが、すべて「100%確定」している世界、予測できないことがない世界というのは、私たちが生きる世界としてどうなのでしょうか?
私たちはこの世界、この時代に命を授かって、おそらく何かを学び体験、会得しながら人生を謳歌していく生き物だと思います。
そう思うと、損やリスク、不確定要素がまったくない中で暮らすことを求めていくことに疑問が生じないでしょうか? むしろ、損やリスク、不確定要素とどれだけ付き合っていくのかを自分で学び、自分を信じる信念を持ち続けることに意味があるのではないでしょうか?
株式会社は400年以上前の東インド会社に始まって今に至ります。株式会社は経営組織の姿ですから、当然、栄枯盛衰があります。
でも、見えないリスクを自分なりに抱え、何かに打ち込んできた成果が、伝統や文化、技術を育み1つの理念となって、今に引き継がれています。その一部だけをみて、損か得かを計って株を売買し、損をした経験を愚痴のように引きずってしまうのは、あなたの目にはどんな姿に映りますか?
「100%確実」はあり得ないことを念頭に置く
行動経済学では、他にも、「つぎこんだ費用をめぐる誤り」や「錨おろし(アンカリング)」が私たちの行動に影響を及ぼしていることを指摘しています。
つぎこんだ費用については、自分がお金を出して入手したり、今までかけてきた費用が多いことには執着度が高い傾向が見られること、また、錨おろし(アンカリング)は、最初の印象や目先の情報がその後の行動の基準になってしまうほど影響を及ぼすことを指し、それを克服することの難しさも言われています。
ですから、株の投資に際しては、「100%確実」はあり得ない世界として付き合うこと、自分のメンタルと向き合っていくことが大事ということは忘れないでください。自分らしい投資を楽しめるようになってきた人の多くは、自分の感情とリスクや不確定要素、損失と付き合っていくルールを身に付けようと心掛けています。
そして、このように口をそろえて言います。「違うと思ったら潔く損を受け入れ、過去を引きずることなく、近い将来の価値あることへお金を回していくと、自然と成果が出てくるようになった」と。
あなたも、その醍醐味を得られるように、杏奈さんとともに投資の極意を習得していきましょう。