年収450万円、42歳男性の“可もなく不可もない”日常
松田亮さん(仮名・42歳)は、とある中小企業の情報システム部で働いている。毎日社員のパソコンを見つめ、あらゆるITトラブルの対応に追われる日々を過ごしていた。
年収は450万円程度で、1人で生活するには十分だが、家族を養うには心もとない収入だ。彼の仕事ぶりは悪くはないが、特に優秀とも見られず、周囲からは「頼りにはなるが、特に抜きん出たところはない」という評価でいわゆる“地味な存在”であった。
自分のスキルが評価されている実感はない。ただ“可もなく不可もなく”日々の業務をこなす亮さんは、どこか自分の価値に疑問を感じはじめていた。
自分の価値に気づいた「頭数合わせの会議」
そんなある日、亮さんが頭数合わせのために出席した取引先との会議でのこと。突然相手方のパソコンに不具合が生じ、会議が中断する事態となった。
しかし、日々のトラブル対応に慣れている亮さんは、その場で手際よくパソコンを操作し、ほどなくして会議を再開することができた。取引先の担当者からは「さすがIT担当ですね! すごい」と称賛されたのだが、そのとき、亮さんの心にふと疑問が浮かんだ。
「これって、そんなに特別なことなのか?」
普段当たり前のようにこなしていることが、他者から見ると特別なスキルに映っている……亮さんが、自身の「隠れた価値」に気づいた瞬間だった。
しかし、自社に戻ると、自分が評価されているとは思えない。「松田さん、なんとかして~。また壊れちゃって……」とパソコンの不調を訴える同僚には、「まだ? 急ぎなんだけど、もう少し効率よくやる方法とかないの?」と言われる始末だ。いつもなら聞き流すところだったが、この同僚のひと言が逆に亮さんの背中を押すことになった。
「ここで仕事を続けても、自分の価値が認められることはないな」
亮さんは、自身のスキルをもっと違った形で活かせないか模索することにした。
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