趣味が“思わぬ価値”に…副業・起業のカギとなる「無形資産」
副業や起業は、特別なスキルや豊富な資金がないと難しい──そう考えている人は少なくない。しかし、実際には、自分では当たり前と思っている“好きなこと”や“続けてきた趣味”が、思わぬ価値を生むことがある。
この“好きなこと”や“続けてきた趣味”のことを「無形資産」と呼ぶ。これを活かすことで、たとえ会社員であっても収入を大きく伸ばすことが可能だ。
近年、こうした無形資産を活用して、地域活性やインバウンド需要と結びつける取り組みが注目を集めている。特に、行政やNPO主導の観光コンテンツ制作の分野では、地元の文化や歴史、自然を“語れる人材”へのニーズが高まっており、これが副業・複業の新たなフィールドになりつつある。
そこで今回、地方の中小企業で事務職をしていたごく普通のサラリーマンが、自身の“好き”を活かして収入増を達成するまでの道のりを紹介する。
趣味は地図を眺めること…43歳サラリーマンに訪れた転機
佐々木翔太さん(仮名・43歳)は、地方都市の中小企業に勤めている。総務・庶務を担当しており、勤続15年、年収は約420万円。特に目立った成果もなく、昇進もしていない。毎日始業時間ギリギリに出社して定時に帰る、そんな日々を送っていた。
そんな彼の唯一の趣味は「地図を眺めること」。学生時代から地図帳や地形図を眺めるのが好きで、旅行に行く際も必ず地図アプリと紙の地図を並べてルートを練る。しかしその趣味を誰かに話す機会もなく、周囲からはせいぜい「道案内が得意な人」くらいにしか思われていなかった。
転機となった親戚のひと言
転機が訪れたのは、地方に住む高齢の親戚を訪ねたときのこと。その地域で最近オープンした店が気になるもののチラシの地図では分かり辛いとぼやく親戚に、地図アプリと手書きのメモを駆使して丁寧に案内。すると、予想外に感謝された。
「翔太君の説明、すごく分かりやすいわ。観光ガイドでもやったらどう? 向いてるんじゃない?」
冗談交じりのこの言葉に、翔太さんははたと気づかされた。
自分が好きでやっていることが、誰かの役に立つのかもしれない。
早速調べてみると、自治体や観光協会が「地元ガイド育成プログラム」や「通訳ガイドボランティア」の研修を行っているらしい。翔太さんは、休日を使ってこうした研修に参加することにした。
