貧富の格差は「小さいが小さくない」?
ここまで日本における貧困層の現状について述べてきました。それでは、その対極にある「富裕層」はどの程度存在しているのでしょうか。
新型コロナの感染拡大とその感染対策の影響で各国の経済活動が停滞し、非常に広い範囲で影響がみられました。しかし、そうしたなかでも経済の低迷に対応する各国の財政出動や金融緩和措置により、富裕層の保有資産の価値が大きく上昇し、「富裕層」と「貧困層」の格差が広がったと言われています。
「富裕層」の決まった定義はありませんが、例えば、フランスの経済学者トマ・ピケティらが運営する「世界不平等研究所」が発表した「World Inequality Report 2022」では、特定の地域の「所得上位10%」や「所得上位1%」を富裕層・超富裕層としています。
同レポートによれば日本は「所得上位10%」に属する人の所得が国全体の所得の44.9%、「所得上位1%」では13.1%を占めています。一方で、「所得下位50%」は全体の16.8%にとどまります。また、資産の保有割合をみると、日本では「所得上位10%」の人の資産が全体の57.8%を占めています。
国税庁が公表している「民間給与実態統計調査(令和4年分)」を確認すると、日本のトップ10%の所得者に当たるのは、年間給与額が800万円を超える給与所得者であり、全体の平均給与の458万円より300万円以上を稼いでいる人になります。
1年を通じて勤務した給与所得者は約5,078万人いますが、そのトップ10%、つまりたった500万人の人が国全体の6割近くの富を持っているということが同レポートで示されているのです。一方で、「所得下位50%」に属する人の資産は全体の5.8%しかないという結果です。
日本における所得と保有資産の状況でみると貧富の格差が大きく感じられますが、世界と比べるとどうなっているでしょうか。まず、世界全体の所得の割合についてみると、「所得上位10%」の人で全体の52.0%を占め、その割合は日本より約7ポイント高くなっています。他方、「所得下位50%」は8.5%と日本の約2分の1にとどまっています(図表2)。
また保有資産について、「所得上位10%」は76%で日本を20ポイント近く上回り、「所得下位50%」は2%と日本より低くなっています(図表3)。
このように、日本における富裕層とその他の層との格差は世界に比べて小さいとみられます。しかし、絶対額をみれば決して格差は小さいとは言えないでしょう。同レポートでも「日本の富の分配は、西ヨーロッパ各国ほどではないが非常に不平等である」と指摘しています。
「日本における貧困率が先進国で最悪」と聞いて驚く人は少なくないでしょう。貧困、すなわち食べるものがない人たちなど「絶対的貧困」に陥る人を想像しがちだからです。
今回の「相対的貧困率」に関する報道をきっかけとして、日本には生きる上で必要最低限の「衣食住」を持っているものの、生活に苦しんでいる人は多くいるという問題、そして国内の経済格差について再確認することにつながったのではないでしょうか。
帝国データバンク情報統括部
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>
注目のセミナー情報
【国内不動産】12月25日(水)開催
フルローン×1都3県・駅チカ物件で利回り7%超×買戻し特約で投資家殺到!
「カインドネスシリーズ」年末特別説明会
【海外不動産】12月26日(木)開催
10年間「年10%」の利回り保証・Wyndham最上位クラス
「DOLCE」第一期募集開始!
【事業投資】12月26日(木)開催
年利20%の不動産投資の感覚で新しい収益の柱を構築
ブルーオーシャン戦略で急拡大!
いま大注目のFCビジネス「SOELU」の全貌
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】