5.企業業績と株式
<現状>
●米ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績は過去最高水準を更新しており、好調を維持しています。8月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+11.5%、TOPIXの予想EPSは同+17.0%と、いずれも2桁の伸びとなりました。
●米国株式市場は、景気悪化懸念から月初に急落したものの、経済指標の改善やFRBのパウエル議長が9月の利下げを強く示唆し、米景気のソフトランディング期待が高まったことから買い戻しが入り、上昇しました。NYダウは前月比+1.8%、S&P500種指数は同+2.3%の上昇となりました。
●日本株式市場は、月初に米景気悪化懸念と円高が嫌気され、歴史的な下落幅を記録しました。その後は急速に持ち直してじり高の展開となり、前月比では小幅の下げにとどまりました。日経平均株価は前月比▲1.2%、TOPIXは同▲2.9%となりました。
<見通し>
●米国株式市場は、FRBによる9月利下げ開始が見込まれるなか、米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。大統領選挙や地政学リスクの不透明感などから変動性が高まる局面が想定されるものの、FRBの利下げ開始や米景気のソフトランディングに伴う企業業績の拡大が見込まれるため、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。
●日本株式市場は、一時大幅に調整したことによる戻り売り圧力や円高が大きく進んだことから上値が重くなった一方、日本の名目GDPや企業業績の拡大に加え、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革進展への期待や企業の自社株買いが支えとなり、当面はレンジ内で推移するとみています。市場では、9月の自民党総裁選に伴う新体制やその後の総選挙の行方、米大統領選など政治イベントが注目されそうです。
6.為替
<現状>
●円の対米ドルレートは、月初に米景気悪化懸念で株式市場が急落したことからリスク回避の動きが強まり、急上昇しました。その後はFRBによる利下げ観測に伴い日米金利差が縮小するとの見方が強まるなかもみあいとなり、146円近辺で終了しました。
●円の対ユーロレートは、小幅に上昇しました。米国とドイツの長期金利差が縮小したことから、ユーロの対米ドルレートが大きく上昇しました。
●円の対豪ドルレートは、小幅に下落しました。米国と豪州の長期金利差が縮小したことから、豪ドルの対米ドルレートが大きく上昇しました。
<見通し>
●円の対米ドルレートは、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると予想します。FRBの利下げ開始と日銀の追加利上げによる日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。
●円の対ユーロレートは、ECBによる追加利下げと日銀の追加利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートは、豪州の先行きの利下げや日銀の追加利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。