1.概観
【株式】
8月の主要国の株式市場は、米景気悪化懸念などから月初に大きく調整したもののその後持ち直し、高安まちまちとなりました。米国株式市場は、月初の急落後、経済指標の改善や米連邦準備制度理事会(FRB)の9月利下げ観測の高まりを受けて買いが優勢となり、NYダウが最高値を更新するなど月間では上昇しました。欧州の株式市場も米国株の持ち直しを受けて買い戻しが入り、ドイツDAX指数が最高値を更新するなどしっかりとした動きとなりました。一方、日本の株式市場は、月初に歴史的な下落幅を記録した後、急速に持ち直しましたが、円高が重石となり小幅安で終了しました。中国株式市場は、中国景気の先行きへの懸念から上海総合指数が続落した一方、香港ハンセン指数は米国株に連れて反発しました。
【債券】
米国の10年国債利回り(長期金利)は、FRBが9月に利下げを開始するとの見方が改めて強まったことから節目の4%を下回り、一時3.8%を割り込む局面を経て、3.9%に低下しました。ドイツの長期金利は、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が追加利下げについて慎重な姿勢を崩していないことから、ほぼ横ばいでした。日本の長期金利は、月初の株価急落に伴い急低下した後、株価の持ち直しで低下幅をやや縮めました。
【為替】
円の対米ドルレートは、米利下げ観測を受けて日米金利差が縮小するとの見方を主因に大きく上昇し、月末は146円近辺で終了しました。
【商品】
原油価格は、米景気の減速観測や中国景気の弱さから原油需要が減少するとの見方が強まったことなどから下落しました。
2.景気動向
<現状>
●米国の4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.0%となり、前期の同+1.4%から加速しました。個人消費や設備投資が堅調でした。
●欧州(ユーロ圏)の4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.2%と、インフレの落ち着きを背景に2四半期連続でプラス成長となりました。
●日本の4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.1%と、2四半期ぶりにプラス成長となりました。個人消費が5四半期ぶりのプラスとなりました。
●中国の4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.7%と、前期の同+5.3%から減速しました。需要不足により内需が停滞しました。
●豪州の1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.1%と、前期から減速しました。物価高で個人消費が伸び悩み、前期比は+0.1%でした。
<見通し>
●米国は、大幅な利上げに伴う景気抑制効果に加え、コロナショック後の消費増加の一巡、財政刺激効果の鈍化などから、景気が緩やかに減速すると想定しています。個人消費が底堅いことや企業収益が好調なことから、景気の急減速は避けられ、軟着陸(ソフトランディング)に至るとみています。
●欧州は、景気が持ち直しているものの、当面低成長が続くとみられます。ただし、インフレの鈍化による購買力の回復、労働力不足に伴う雇用増、利下げによる貯蓄率の低下、EU復興基金などの財政支援が景気を支えるため、腰折れはしないとみています。
●日本は、インフレ圧力の継続により個人消費が力強さを欠くものの、賃金の上昇、経済対策(定額減税・給付金)、インバウンド消費の増加、底堅い米景気や堅調な企業収益を背景に持ち直し、緩やかな成長軌道を辿る見通しです。
●中国は、不動産市場の低迷に加え、海外企業の投資減少や若年層の雇用悪化などから個人消費も力強さを欠き需要不足が続くことから、景気の回復ペースが鈍化するとみられます。ただし、政府の住宅対策や拡張財政により急激な減速は避けられる見通しです。
●豪州は、中国景気の減速に加え、利上げの累積効果や、粘着質なインフレにより家計の実質可処分所得が圧迫されることから個人消費の回復が緩慢となるため、当面景気が緩やかに減速するとみられます。ただし、年後半のインフレ鈍化により、25年にかけては徐々に持ち直すとみています。