SNSも活用して入居希望者の属性を審査する保証会社
部屋を借りる際には連帯保証人が必要です。昔は親や兄弟などの身内を保証人としていました。現在は保証会社なるものが台頭してきて、「保証人より保証会社に入ってください」という不動産屋が増えています。
12~13年前までは、不動産屋の大切な仕事として「入居者の審査」がありました。申込書の内容や接客したときの受け答えで、その人の人間性や性格を見極め、職業や収入面などを考慮して保証人の内容と照らし、入居の可否を決めていたのです。不動産屋歴50年などのベテランは、一瞬にしてその人の性格や家賃を滞納するか否かまでわかってしまうそうです。しかしその神業も、現在はほとんど必要なくなってきました。
不動産屋は、お客様から申し込みが入るとすぐに、取引のある保証会社に申込書と身分証明書をFAXします。保証会社は、個人情報などの情報バンクや独自の情報網で調査するわけです。審査基準は詳しく教えてくれませんが、過去の金融事故や、保証会社同士のネットワークから、その人がブラックかどうかを見ていると思われます。もちろん、勤めている会社の内容や、最近では学歴なども見ているようです。外国人であれば、母国の両親の情報や連絡先を聞いて、確認の電話までする保証会社もあるといいます。今は、入居可否は不動産屋ではなく保証会社が審査するのです。
審査落ちの連絡はしてくれても、個人情報保護法がありますので、何が原因で審査に落ちたかは教えてくれません。
審査落ちの理由としてまず考えられるのは、勤務先として記入した会社が、いわゆる「アリバイ会社」だった場合や、お金で保証人を買っていた場合などがあります。その他に収入が低い場合にも落ちる可能性があり、一般に保証会社は家賃の3倍の月収があることを目安にしています。家賃が10万円なら、30万円以上の収入が必要ということです。そのため、正社員よりアルバイトのほうが当然不利となります。また、勤務先も重要ですが、何より会社のホームページの有無がポイントです。今は保証会社の審査では会社のホームページをじっくり見ますので、ホームページがないと幽霊会社とみなされ、そこそこ大きい会社でも論外になってしまいます。さらに、個人名も検索してみるそうです。昨今はごく普通の人でも何か出てくるもので、Facebookもそのひとつです。
ある法人が事務所の賃貸申し込みをし、保証会社が審査を行いました。Facebookで代表者のプロフィール写真は入れ墨の写真、さらにはプロフィールに前科一犯と記載されており、一発NGとなってしまいました。今や、ブログやTwitter、Facebookを見れば、ほとんどのことがわかってしまいます。ある意味、怖い気もしますね。
「保証会社の利用」にも様々なリスクはあるが・・・
ただ、保証会社にもいろいろな会社があり、潰れてしまってトラブルになっている保証会社すらあるのが現状です。保証するはずの会社が潰れるというのは笑えない話ですが、実際にはよくある話で、私が知っている最悪のケースとしては、保証会社の業績が悪くて社員に給料が支払われず、生活に困った集金の担当者が、担当エリアの滞納家賃の集金分を会社に入金しないで給料の代わりにしてしまったことがありました。通常は保証会社が家賃を集金したあと、大家さんに支払うわけですが、この場合は当然ながら大家さんに家賃は支払われませんでした。
また、サブリース(家賃保証)の会社は、入居者に対して家賃を保証会社の口座に振り込ませていますが、多数の入居者から家賃を受け取ったにもかかわらず、一切大家さんに支払われなかったことがあり、社会問題になりました。
賃貸契約の際、「保証会社への加入+連帯保証人」が必要な場合があります。「なぜ保証会社に入るのに、その他に連帯保証人が必要なんだ!」と怒り出す人もいますが、その怒りはもっともです。なにせ、保証料を支払ったうえに、まだ保証人を探せというわけですから。しかし、保証会社も潰れる時代ですし、悪質な客等は6カ月以上代位弁済しなければならず、また裁判所もなかなか退居命令は出してくれません。今は、賃料を払わないからといって鍵を変えたりできる時代ではないので、保証会社も必死で、保守的になり、不条理な条件になってしまうということです。
ところが、今や大家さんも意識が変わってきて、ヘタな連帯保証人よりも保証会社のほうがよいという認識です。そもそも出稼ぎの外国人が身内の保証人を用意できるでしょうか。また近年は保証人もお金で買える時代ですが、家賃滞納で身内の連帯保証人に連絡して家賃の請求をしても、「本人に払ってもらえ」「俺も余裕がないし払えない」「知らないよ」との返事。「連帯保証なので直接保証人さんに請求してもいいのですよ」「払ってもらえないと裁判になりますよ」と言っても、開き直って「勝手にやってくれ」と電話を切ってしまう人も少なからずいます。
こんなこともよくある話なので、やはりリスクはあっても保証会社が使われているのです。