遺産分割協議書が不要な場合
相続発生後に相続人間で遺産をわけるためには、原則として遺産分割協議をまとめて遺産分割協議書を作成しなければなりません。しかし、なかには、遺産分割協議書が不要なケースもあります。ここでは、遺産分割協議書を作成する必要がないケースを3つ解説します。
1.遺言書に従って遺産を分割する場合
1つ目は、被相続人が有効な遺言書を遺しており、その遺言書に従って遺産を分割する場合です。遺言書ですべての遺産について承継者が決められている場合は遺産分割協議をする必要はなく、遺産分割協議書を作成する必要もありません。遺産分割協議書がなくても、遺言書を使って遺産の解約や名義変更が可能であるためです。
2.相続人が1人しかいない場合
2つ目は、相続人が1人しかない場合です。相続人が1人しかいない場合は遺産分割協議をするまでもなく、その1人の相続人が遺産をすべて相続します。そのため、遺産分割協議書を作成する必要はありません。なお、相続人となる者は、配偶者のほかに第1順位から第3順位までが定められており、それぞれ次のとおりです。
第1順位:被相続人の子。被相続人の死亡以前に死亡した子がいる場合は、その亡くなった子の子(被相続人の孫)が代襲して相続する
第2順位:被相続人の親。両親がともに他界しており、祖父母のなかに存命の人がいる場合は、その存命の祖父母
第3順位:被相続人の兄弟姉妹。兄弟姉妹の中に被相続人の死亡以前に死亡した者がいる場合は、その亡くなった兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)
このように、相続人の範囲は広く、甥姪までが相続人となる可能性があります。そのため、子どものいない夫婦であるからといって夫(妻)だけが相続人になるとは限らないため、誤解のないよう注意してください。
3.相続人が1人を残して相続放棄した場合
3つ目は、相続人が1人を残して相続放棄をした場合です。相続放棄とは、相続発生後一定期間内に家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人ではなかったこととなる手続きです。
たとえば、相続人がもともと配偶者と長男、二男の3名であったものの、配偶者と二男が相続放棄をした場合には、長男だけが相続人となります。そのため、この場合は遺産分割協議をするまでもなく、結果的に唯一の相続人となった長男が相続することとなります。
ただし、相続放棄をした事実は戸籍などの記載されるわけではないため、手続き先である金融機関や法務局などは配偶者や二男が相続放棄をしたかどうかがわかりません。そのため、この場合は配偶者と二男それぞれの「相続放棄受理証明書」を家庭裁判所から取り寄せて、これを手続き先に提出することが必要です。
なお、子が全員相続放棄をした場合は、配偶者だけが相続人となるのではなく、相続権が次順位へと移ることに注意しなければなりません。たとえば、もともとの相続人が配偶者と長男、二男であったところ、長男と二男が相続放棄をした場合は、配偶者だけが相続人になるとは限らないということです。
この場合において、第2順位の相続人や第3順位の相続人がいるのであれば、その者が繰り上がって配偶者とともに相続人となります。
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