相続人同士の「言った・言わない」のトラブルを防ぐ「遺産分割協議書」の提出先は?そもそも作成不要なケースも【弁護士が解説】

相続人同士の「言った・言わない」のトラブルを防ぐ「遺産分割協議書」の提出先は?そもそも作成不要なケースも【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人間で遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書はどこに提出するものなのでしょうか? また、遺産分割協議書の作成が不要な場合はあるのでしょうか? 本記事では、遺産分割協議書の取り扱い方法について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

遺産分割協議書に関するよくある疑問

最後に、遺産分割協議書に関するよくある疑問とその回答を紹介します。

 

遺産分割協議書は提出先の数だけ作成すべき?

遺産分割協議書は、提出先の数分を作成する必要はありません。なぜなら、銀行や証券会社などの手続き先にはいったん原本を提出する必要があるものの、コピーを取ったうえで原本を返却してくれることが一般的であるためです。また、相続登記の申請先である法務局も、所定の原本還付手続きをとることで、原本の返却が受けられます。

 

遺産分割協議書は自分でも作れる?

遺産分割協議書は、自分で作成することも不可能ではありません。インターネットや書籍などを参照すれば、記載例を見つけられるでしょう。ただし、自分で記載方法を調べたり実際に作成したりする時間や労力を掛けたくない場合や、遺産分割協議書の記載を巡るトラブルを生じさせないためには、専門家に作成を依頼することをおすすめします。

 

また、相続人間の関係性があまりよくない場合も、専門家に作成を依頼したほうがよいでしょう。なぜなら、関係性がよい場合は記載に誤りがあって手続きに使えなくても、作成し直した遺産分割協議書に再度署名や押印を受けられる可能性が高い一方で、関係性がよくない場合には再度押印などに応じてもらうのが難しい可能性があるためです。

 

行方不明の人や認知症の人は遺産分割協議書に押印しなくてよい?

相続人の中に行方不明となっている人や重い認知症の人などがいる場合、これらの人は、遺産分割協議書に有効に署名や押印をすることが困難です。しかし、これらの人の押印がない遺産分割協議書は無効であり、手続きに使用できません。なぜなら、遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があるためです。

 

相続人なかに行方不明の者や認知症の者など有効に押印することが難しい人がいる場合は、これらの人の代わりに遺産分割協議に参加する人を家庭裁判所で選んでもらうステップが必要となります。具体的には、行方不明の場合には「不在者財産管理人」、認知症の場合は「成年後見人」がこれに該当します。これらの人の選任を裁判所に申し立てるには、裁判手続きに関する理解が必要です。

 

また、特に成年後見人はたとえ選任のきっかけが遺産分割協議であったとしても、原則として本人が亡くなるまで制度の利用を辞めることができないなど、注意点が少なくありません。

 

相続人のなかに有効に押印をすることが難しい人がいる場合は、あらかじめ弁護士などの専門家へ相談したほうがよいです。

 

遺産分割協議書はコピーの提出でよい?

遺産の名義変更や解約に使用する際、遺産分割協議書は原則としていったん原本を提出することが求められます。ただし、先ほど解説したように、原本の確認後はコピーを取ったうえで原本は返却されることが一般的であり、手続き先の数だけ遺産分割協議書の原本を作成する必要はありません。

 

一方、相続税申告は、はじめからコピーの添付でよいとされています。具体的な取り扱いは手続き先の金融機関などのよって異なる可能性があるため、実際に手続きをする際は、手続き先にご確認ください。

手続きが複雑な遺産分割協議書

遺産分割協議書は、相続人全員で行った遺産分割協議の結果を示した書類です。遺産分割協議を有効に成立させるためには相続人全員による合意が必要であることから、遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での押印が必要となります。

 

遺産分割協議書の提出先は、金融機関や法務局、税務署などさまざまです。スムーズに手続きをすることができるよう、遺産分割協議書の作成は弁護士などの専門家に任せることも一案です。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所

 

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