米金利、米ドル/円の短期的な「下がり過ぎ」が懸念される
米金利、金融政策を反映する2年債利回りは、政策金利FFレートの誘導目標上限(5.5%)をすでに1.5%以上も下回っています。これは、1998年以降で見ると、2番目に大幅なものです(図表3参照)。
基本的には、米利下げを先取りする形で、2年債利回りが低下していますが、目先的には、やや「下がり過ぎ」の懸念もありそうです。
短期的な「下がり過ぎ」懸念は、米ドル/円についても気になります。米ドル/円は、8月5日に141円台まで急落しましたが、そのタイミングで、90日MA(移動平均線)かい離率は、一気にマイナス10%近くまで拡大しました。
これは、短期的な「下がり過ぎ」懸念が、かなり強くなっていたことを示すものでした(図表4参照)。
その後、米ドル/円が149円台まで反発するなかで、短期的な「下がり過ぎ」も修正されましたが、90日MAかい離率は、足下でもマイナス6%程度で推移しており、「下がり過ぎ」気味の状況は、なお変わっていないといえそうです。
以上のように、「米金利低下=米ドル下落」が、このまま一気にこの間の米ドル安値の141円台更新を目指すということでもないかもしれません。
ただし、米ドル/円は、先週までに足下で150.7円程度の52週MAを4週連続で下回りました。これは、2022年1月から展開してきた米ドル/円の上昇トレンドのなかでは見られなかった現象です(図表5参照)。
その意味では、米ドル/円の上昇トレンドは、あの161円で終わり、複数年続く下落トレンドに転換した可能性が高くなっているでしょう。
ちなみに、上昇トレンドにおいて、52週MAはサポートの役割を果たしてきましたが、下落トレンドに転換すると、一転してレジスタンスの役割に変わるのが基本です。
ということは、下落トレンドと逆行する一時的な上昇は、52週MAを大きく越えない程度にとどまり、米ドル/円は、複数年かけた下落に向かう可能性が高くなってきたといえます。
今週の注目点=9月FOMCの利下げ幅を見極める展開
先週公表された7月FOMC議事録や、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言などを受けて、9月FOMCでの利下げはほぼ確実視されたようです。
今後は、今週発表予定のPCEコアデフレーターなどのインフレ指標、そして、9月6日発表予定の米8月雇用統計などの結果を受けて、9月FOMCの利下げ幅が0.25%にとどまるか、それとも0.5%以上の大幅なものになるかを見極めていくことになりそうです。
すでに見てきたように、米金利は目先的にはやや「下がり過ぎ」の懸念もあるため、大幅利下げ観測が後退した場合、「下がり過ぎ」の修正で上昇する可能性はあります。ただし、9月利下げの流れはほぼ確実になっていることから、米金利上昇の場合でも、おのずと限度があるのではないでしょうか。
米ドル/円は、先週も144~148円と約4円のレンジで推移するなど、依然としてボラティリティの高い、活発な値動きが続いています。
上記を踏まえ、4円程度の比較的大幅なレンジでの展開が続くとすれば、今週の米ドル/円の予想レンジは、142.5~146.5円で想定します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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