口もききたくない!仲が悪すぎるドイツ人元夫婦…離婚後、子どもたちと過ごす夏休み、日本人にとっては「異様な光景」か?【中央大学文学部教授が解説】

口もききたくない!仲が悪すぎるドイツ人元夫婦…離婚後、子どもたちと過ごす夏休み、日本人にとっては「異様な光景」か?【中央大学文学部教授が解説】

離婚してひとり親になると、経済的・社会的にリスクを負う日本。離婚に伴う子どもへの影響に対する価値観は、欧米と比較すると大きく異なるようです。本記事では、社会学者で中央大学文学部教授の山田昌弘氏氏の著書『パラサイト難婚社会』(朝日新書)から、離婚を巡るリスクと問題点について解説します。

離婚で生じるリスクとデメリット

経済的メリットや生活の安定性を考えた場合、「離婚」はどのような意味を持つのでしょう。結婚と同じように、離婚も「経済生活」に変化をもたらすイベントです。そして離婚による経済的リスクには、子どもがいるかいないかも、大いに関係してきます。

 

仮に子どもがいないなら、離婚して人生の再スタートを切ることは比較的容易です。「離婚」したとしても、元の「独身」状態に戻るだけ、結婚前の生活に戻ればそれでいいからです。

 

特に日本では、若いうちは親元に戻る割合が高く、再びパラサイト・シングル状態になる人も多いです。

 

しかしながら子どもがいる場合、「離婚」によって(元)夫婦の生活は激変します。どちらが親権を持つかにもよりますが、現在、親権を取得するのはほとんどの場合が母親ですので、こちらをメインに見てみましょう。

 

子連れの女性が離婚した時、直面する問題

女性が「離婚」をすると、子どもの養育義務は一挙に女性の肩にのしかかってきます。手間暇ばかりでなく、コストの面からもです。

 

本人がフルタイムの仕事をしていればそれなりに経済的安定性を確保できますが、自分の就業中に「家事育児を誰がするか」という問題が生じます。自らの父母と再同居もしくは近くに住んで面倒を見てもらう、もしくは家事代行サービスやシッターなどの外部委託に頼るかなど、保育所や学校ではカバーしきれない部分のケアも必要です。

 

もちろん、それなりにコストもかかるでしょう。育児をしない夫であっても、いるだけましなのです。

 

より条件が厳しくなるのは、それまで専業主婦だった女性が離婚をするケースです。パート程度の収入の女性も同じです。別れた夫からある程度の生活費・養育費が振り込まれることはあっても、元夫が相当の高収入でない限り、それだけで暮らしを営む額を得られることはめったにありません。自身も働かないと、自分と子どもとの生活はままなりません。

 

このあたりの事情が女性の経済的自立を阻み、「離婚」に躊躇する女性を多く生み出しています。「離婚」が「貧困」への入り口になってしまうケースが多いからです。

 

多くの企業は正社員を新卒一括採用で雇用するか、すでに就労経験のある人材を中途雇用で得ようとします。令和の現在でも、「これまで専業主婦でした」という女性を積極的に雇用し、職場でリスキリングする制度が整っているとは言えません。

 

結果的に、彼女たちが働ける職場は時給も低く雇用も不安定なアルバイトやパートなどの非正規雇用となり、「離婚・シングル・子持ち」が三重苦となって、「貧困」に直結しやすいのです。

 

接客を伴った飲食業(いわゆる水商売)であれば、収入はある程度確保できるかもしれませんが、今度は彼女たちの働く時間に子どもを預けられる場所がありません。

 

日本では児童虐待の件数も膨大ですが、その背景にも、「結婚」「離婚」にまつわる「子持ち女性の貧困化」という問題が根底に絡んでいるのです。

 

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※本連載は、山田昌弘氏の著書『パラサイト難婚社会』(朝日新書)を一部抜粋し、再編集したものです。

パラサイト難婚社会

パラサイト難婚社会

山田 昌弘

朝日新書

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