かつては、低収入でも「結婚したい」と思えた日本だが…現代人の「難婚」がスッと腑に落ちる“心理カウンセラーのひと言”【中央大学教授が解説】

かつては、低収入でも「結婚したい」と思えた日本だが…現代人の「難婚」がスッと腑に落ちる“心理カウンセラーのひと言”【中央大学教授が解説】

結婚はお金がなければできない……そのような風潮が根付く現代の日本。難婚社会の根本原因はどこにあるのでしょうか? 本記事では、社会学者で中央大学文学部教授の山田昌弘氏の著書『パラサイト難婚社会』(朝日新書)から、現代人の難婚の原因について解説します。

異種のゴールを同時に求められる難婚

「格差」が広がっている日本では、「結婚」も二極化していると感じています。

 

日本が「皆婚」社会であった要因の一つは、当時の日本全体が好景気に沸き、高度経済成長期でもあったからです。その時代では人々が「結婚」に、「愛情」と「経済的安定性」の双方を求めても、多くの場合がそれに応えられたのです。

 

もちろん皆が金持ちにはなれなくても、ほとんどの人が「昨日より今日、今日より明日」の方が豊かになると信じられたのです。

 

どんな職業の男性(工場労働者でもサービス業者でも中小企業の社員でも)と結婚しようと、大抵の人は給与アップと、生活の向上を体感することができました。「結婚」が、多くの人にとって「経済的安定性」を約束することができた稀有な時代だったと言えるでしょう。

 

しかし今、10年後、20年後どころか、数年先の生活も先行き不透明で、「子どもを生み育てられるのか」確信を持てない社会となった結果、人々は「愛情さえあれば、後は何とかなる」とは思えなくなっています。それこそが夢物語であり、「結婚」は「経済的安定性」がなければ持続可能ではないことを、「離婚が3組に1組の時代」だからこそ、若者は痛感しているのです。

 

心理カウンセラーの先生がおっしゃっていた言葉が、印象的でした。その先生によると、「人間は複数のことを同時に行うのが苦手」らしいのです。

 

一つの要素だけなら集中して頑張れる、しかし、複数のことを同時に成し遂げようとすると、それは労力も心的ストレスもかかり、負荷が大きくなってしまうのだそうです。そう考えてみると、まさに現代日本の「結婚」こそ、複数のことを同時に行おうとするような行為ではないでしょうか。

 

見た目のいい相手とロマンティックな恋愛をしたい。だが、結婚後は安定した生活を営みたい。子どもが生まれたら、夫婦生活も育児も仕事もしっかりやりたい。

 

現代人は、「選択の自由」という権利を手に入れた結果、「複数の選択を同時に考慮する」という、人間にとって実は非常に難易度が高いことをやり遂げなくてはならない事態に陥ってしまったのではないでしょうか。

 

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※本連載は、山田昌弘氏の著書『パラサイト難婚社会』(朝日新書)を一部抜粋し、再編集したものです。

パラサイト難婚社会

パラサイト難婚社会

山田 昌弘

朝日新書

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