ベトナムの高齢者は子供たちと老後を過ごすのが一般的だが…
ベトナム不動産協会(VARS)の調査によると、国内には約400の老人ホームがあり、その約50%は慈善センターや国営施設である。
ベトナムの高齢者は伝統的に子供たちと共に老後を過ごすことが一般的だが、老人ホームの増加により、この状況は変わりつつある。
ハノイのハイバーチュン区に住むキム・アインさんは、自宅で介護者のサポートを受けて暮らしていた80歳の母親が、認知機能の低下と老人性うつ病の兆候が見られることに悩んでいた。彼女は、友人たちの助言を受け、老人ホームへの入居を検討することにした。
キムさんは、母親や他の家族が親しみを込めて「寄宿学校」と呼ぶ老人ホームに入居してから、母親の健康状態が著しく改善されたことに驚いたという。ベトナム社会では、老人ホームへの入居には多くの社会的偏見が伴うため、母親を「寄宿学校」に入れることは簡単な決断ではなかった。
「海郷看護センターでの母が、家にいたときよりもはるかに幸せで活き活きとしているのを見て、私は長年、間違った方法で彼女をケアしてきたことに気づきました。幸い、まだ手遅れではありませんでした」とキムさんは言う。
急激に進むベトナムの高齢化
専門家によれば、ベトナムにおける高齢化の進行に伴い、高齢者向け医療サービスの需要は質・量ともに増加している。しかし、ほとんどの老人ホームは、国の平均所得、特に高齢者の平均所得に比べて利用料が高いため、都市部に住む少数の高齢者のニーズにしか対応していないと指摘する。
高齢者介護施設、とりわけ民間の施設の数は、その潜在的なニーズに対してまだ不十分である。
ベトナムの保険会社バオベト・ホールディングスのデータによると、老人ホームはベトナムの全63都市・省のうち32都市にしか存在せず、その一方で一人暮らしの高齢者の割合は増加している。ベトナム不動産協会の別の調査によると、国内には約400の老人ホームがあり、その約50%は慈善センターや国営施設である。
国連人口基金(UNFPA)の統計によると、ベトナムは世界で最も急速に高齢化が進む国のひとつである。
2036年には高齢化社会に突入し、2050年には60歳以上の人口が全人口の25%を超えると予測されている。この人口動態の変化は、平均寿命の延びや死亡率の低下だけでなく、出生率の大幅な低下によってももたらされる。
ベトナムの合計特殊出生率は過去30年間で半減し、1989年には女性1人当たり3.8人だった子どもの数は、2023年には2人を下回っている。
ベトナム不動産協会の分析によると、先進国が人口の高齢化に対応するために政策を調整するには数十年から数百年かかるのに対し、ベトナムは現在の若くて労働力が豊富な「黄金人口」を最大限に活用しなければならない状況にあり、今後12年しか高齢化社会への対応の時間が残されていないと指摘している。このような状況から、高齢者の健康管理、治療、生活の質を確保するため、老人ホームの整備が急務となっている。
ベトナム不動産協会の予測によると、都市部でも農村部でも子供と同居しない高齢者が増えており、この需要はますます切迫している。
介護施設への投資拡大の兆し
専門家は、政府が高齢者向け介護サービスの発展を促進するために、特に高齢者介護モデルの開発において、企業の参入を促す政策を打ち出す必要があると提言している。
例えば、開業後数年間の所得税減税や免税、融資優遇政策、民間外資誘致政策、老人ホーム事業への国営支援基金などが考えられる。高齢者ケアにおける官民パートナーシップ(PPP)モデルの促進に加え、老人ホームの運営と基準に関する明確で透明性のある法的枠組みが必要である。
イギリス系総合不動産サービス会社サヴィルズ・ベトナムのトロイ・グリフィス副社長は、「ベトナム市場にはリタイアメントホームの開発にとって複数の利点があり、特に投資価値のある保険パッケージが人気を集めている」と述べた。
「将来的には、伝統的な家族向け住宅から介護施設等への投資機会が増えるはずだ」と彼は付け加えた。
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