(※写真はイメージです/PIXTA)

「うちの親はまだまだ元気だから、認知症対策なんて必要ない」と考える方も少なくないでしょう。しかし、相続の視点で見ると、認知症になってからでは手遅れになりかねません。本稿では、親が健康なうちに認知症対策を講じ、成功した事例を通じて、大野紗代子税理士がその重要性を解説します。

「親が元気なうちに」認知症対策をした63歳男性の事例

今回は、親御さんが元気なうちに認知症対策をした栗田さん(仮名・63歳)の事例です。

 

桜が満開に咲き誇る頃、私の事務所駐車場にとある古い車が止まりました。車には、へこみや傷が多くあり、きれいなところを探す方が難しいくらいでした。そんな車から、ひょろっとした長身の男性が降りてきたのを見て、今日お越しになる予定の栗田さんだとわかり、「こんにちは」と声をかけました。

 

栗田さんは私に挨拶もせず、バンッと大きな音で車のドアを閉めながら「この後、用があるからさっさと話を始めていいかね」とずかずかと事務所に入ってきました。

 

私が応接室に案内をし、お茶を用意すると栗田さんはぐいっと一気飲みし、「今、本当に金がなくて困っていてね。税理士のあんたなら何とかできるんじゃないかと思ってきたよ」と話し始めました。

父の遺した医院を継いだが、経営は厳しくなる一方で……

聞くと、栗田さんは、お父様が開業された自宅兼医院で、内科医として活動している方でした。そこでお母様とお父様、そして栗田さんの3人で暮らしており、お父様は医院長、また経営者として活躍しましたが、10年ほど前に他界しました。その後は、栗田さんがお父様に代わって医院長兼経営をしているそうですが、栗田さんにバトンタッチをされてからというもの、患者さんが減少傾向にあるというのです。

 

「親父はクソ真面目だったからか、一人一人すげー長い時間診ていてよ。俺は丁寧に診察するよりも、短時間にたくさんの患者を診た方がいいと思って、ちゃっちゃかやってたら、それがヤダって人が多くて、どんどん人が来なくなってよ」経営が上手くいかない話になると、話が止まらなくなる栗田さん。

 

最近は、本当に手元にお金がなくなってきているようで、友人数人にお金を借りないと毎月のやりくりができない状況にまでなっているとも話しました。

 

「もうどうしようもないから、病院をさっさとたたんでしまって、ここ1~2年の間に売却したいと思ってね。なんやかんやで医院をたたむとなると、1~2年はかかりそうだしな」 と、栗田さんの中で対策方法をある程度決めているようでした。

 

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