会社で起きる「いいこと・悪いこと」のすべてが財産
経営者が語るべきなのはお客様へのサービスの向上の点で、いかに営業マンたちの意識と技術を高めていくかについてです。
日々、ケーススタディに使えそうな事例は起こっています。何も学ぶことがないという日はありません。ですから、いつでも事例について意見を交わすようにしています。
「今日は○○様のお宅でこういうミスがあったんだけど、どうしてそういうミスが起きてしまったと思う?」「君ならどう対処する?」というように、一人ひとりの意見を聞いて、望ましい対処法を考えさせています。
そして、「この時点でチェックをしておけば、ミスは防げる」「こういうケースでは、こう対応するといいよね」と、具体的なお客様との場面を想定し、対処法をみんなで共有します。
会社で起きているいいことも悪いことも、会社の財産です。この財産をうまく活用しない手はありません。どちらも一担当者だけの経験で終わらせるのは非常にもったいないと考えています。
これは成功している人の本を読むことにも共通しているのですが、疑似体験をすることで経験数を増やしてどんどん自分の仕事に活かしていくということです。
極端に言えば、10人のケーススタディを行うと自分以外の9名の苦い体験を数分で手に入れられるわけです。一人でコツコツと自らの経験だけを積み重ねるよりは、遥かに得です。
「上手くいく人はどうやっているか」を気付かせる
このケーススタディを通して一番学んでほしいのは、問題が起きたときの対処方法ではありません。なぜ問題が起こる前に気付けなかったのか、どうすれば気付けたのか、前兆はなかったのか。それぞれの立場から意見を言ってもらいます。
そうすると人は自分と違う感じ方をし、見るところも違うのだと気付き始めます。そして上手くいっている人はどこを見ているのか、どう感じているのか、コツに気付く瞬間があるはずです。そこさえわかるようになれば、対処方法はそれぞれの立場から考えて行動すればよいのです。
「行動」という形をいくら教えても感じ方や捉え方を実践を通して伝えていかないと、「教えたつもり」「わかったつもり」のくり返しです。
このように私は、特別に研修会や勉強会を設けたりはしません。そのときだけ話し合って考えても、それは「机上のお勉強」で終わってしまいがちだからです。それよりも、日常的にケーススタディを積み重ねていったほうが、日々の業務に落とし込みやすくて実践的です。
一度やったケーススタディを忘れてしまっても、また同じような事例は起こりますから、その都度、「ああ、そうだった」と思い出せばいいのです。何度も何度もくり返すことで、記憶への定着率がよくなり、サービスの質も上がっていきます。