8月以降も、実質賃金は緩やかにプラスに転じる予想
6月にボーナスを支給した事業所が昨年に比べ多く、特別に支払われた給与は、上振れた可能性があるため、6、7月の結果を均してみる必要があります。7月も実質賃金がプラスとなるかは、特別に支払われた給与の結果次第であるものの、8月以降は、春闘賃上げを映じて、所定内給与の伸びが高まることが見込まれることから、実質賃金は緩やかながらもプラスに転じることが予想されます。
所定内給与の動きをみると、所定内給与(本系列)は5月の前年比+2.1%から6月に同+2.3%へ伸びを高めたほか、共通事業所ベース(5月︓前年比+2.8%→6月︓同+2.7%)は高い伸びを維持しています(図表3)。
春闘でのベースアップが3.56%(連合が公表した春闘最終回答集計結果)であることを踏まえると、所定内給与は3%程度に伸びを高めることが予想されます。なお、春闘の賃上げが賃金に反映される割合は、昨年の春闘を例に挙げると、6月15日時点で6割程度、7月以降は8割以上反映されていく形となっています(図表4)。
春闘の結果が実際に反映され、賃金上昇率が明確に高まることで、賃金上昇分を価格転嫁する動きが広がり、物価上昇圧力が強まることを、日銀は重要視しています。賃金の増加については、5月、6月の所定内給与の伸びが高まり、春闘の賃上げが波及しつつあることが確認できました。今後は、実質賃金がプラス圏で安定的に推移する状況になるか、注目されます。
総務省が公表した2024年6月の家計調査では、物価変動を除いた実質消費支出は、6月に前年比▲1.4%(5月︓同▲1.8%)と低調な推移が続いています(図表5)。
今後、賃金の増加により消費が持ち直せば、日銀が目指す「賃金→消費→物価」の好循環が実現する一方で、消費が低調な状況が続けば、持続的な物価上昇は見込みにくく、いずれ物価の伸びは鈍化していくことが予想されます。
消費の先行きを展望するうえで気がかりな点は、足もとの急激な円高や株安です。円高の進行は、企業収益にマイナスの影響を及ぼす一方で、物価の抑制という点で、消費者にとってプラス面もあります。一方、株価の大幅な下落により、消費者心理が悪化する可能性も考えられます。実質賃金がプラス転換したとしても、消費が持ち直すか不透明な状況にあります。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが注目…8月第3週の為替相場にインパクトを与える「重要な経済指標」』を参照)。
※本記事は東京海上アセットマネジメントの「TMAMマーケットウィークリー」の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文は「TMAMマーケットウィークリー」をご確認ください。
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