「小規模案件」の積極的な受注から業務が拡大するも…
前回の続きです。そこで、今までの経験や知識をもとに次のようなことを考えました。
1軒のお住まいの大がかり(数百万単位)なリフォーム工事の周期は概ね10年です。たとえば新築から10年前後で、100万円単位で外装工事、20年ぐらいで水回りの入れ替え工事で数百万円単位の工事が発生します。10年周期の主な理由は、資金的理由や機器関係そのものの寿命などです。
そのような理由から一度工事をすると次の工事はおおよそ10年後となるわけです。この10年間は非効率ですから、どこのリフォーム会社も積極的なアプローチはしません。しかしこの10年間にも、ちょこちょこ小規模の工事はあるのです。
たとえば、ドアの立てつけが悪くなったとか水道から水がポタポタ漏れるようになったとか、網戸の張り替えなど、実はかなりの需要があります。ただし営業(会社)からすれば、少額すぎて単発で受けては利益にならない仕事ばかりなのです。歩合給で給与が決まる営業なら、ただ働きのようなものです。
こうしたお客様にとって緊急性は低いが不便を感じている案件なら競合もなく、創業から間もない会社でも声をかけてもらえるのではないかと考えたのです。
結果はすぐに出ました。今までリフォームチラシを配っても1件の電話もなかったのに、反響が毎日毎日舞い込んできました。利益が出る、出ないなんて関係なく、見ず知らずの方から依頼の電話をいただけることに、純粋に感動を覚えました。
仮説が合っていたこと、人の役に立てる喜び、活動エリアに、点ほどの小ささですが初めて存在感を示せたこと、今も新鮮にあのときの気持ちが蘇ります。
このサービスを通じて、入り口は少額工事ですが、色々な形で直ぐに大きなリフォーム工事に繋がるケースも出てきましたし、営業マンも私も、このやり方なら感謝されながらリフォームの仕事が取れることを実感できました。
しかしながら、このサービスだけで売上をつくるまでには至っていません。スタート時は、『まごの手宅配便』の作業を通しての売上が20%、新規開拓からの売上が80%ぐらいでした。まだまだこのころは新規開拓の割合が圧倒的に多かったのです。
しかしながらチラシのポスティングに対しての反響は大きく、必要としてくれている人が出てきた喜びを毎日体感できていました。
また、会員様のお宅で作業している様子を見ていた近隣の方から直接依頼を受けるようにもなり、新規開拓営業の契約率も飛躍的に高まってきたのです。営業の辛さは大きく軽減、このころから営業の定着率もグンと高まりました。
月日が経つにつれ会員数もどんどん伸び、中途採用で即戦力の営業を採用してエリアを拡大し始めたころ、問題が発生しました。お客様が望んでいないのにリフォームを売り込んでしまって、お叱りを受けるケースが出てきたのです。
これでは信頼どころか、騙されたという気分になってしまい、元も子もなくなってしまいます。
私としては提案をしても大丈夫な人とダメな人をうまく見極めてほしいのですが、営業にしてみれば草むしりなど大変な作業をしていますし、需要がありそうならついつい売り込んでしまう気持ちもわかります。
売り込むからお客様が引いてしまうのだということをアドバイスするのですが、頭では理解しても、条件反射で売り込んでしまうのです。
顧客から相談されるまで「一切の売り込み禁止」を決断
そこで私が決断したのは、一切の売り込みを禁止するということです。お客様から相談されるまでこちらからリフォームを持ちかけないということをルール化しました。
営業の顔色を見ながらの厳しい決断です。言明したことで営業が辞めてしまう可能性だってあります。それでも、朝礼はもとより帰社後、そのほか顔を合わせるたびに、売り込まないメリットを説いて回りました。
そのことにより会員数は日単位で増え、中には一人の会員様から10人ぐらいの紹介を一度にいただけるようなこともあり、その増加に伴い売上も伸びていきました。そこで、作業を専門に行う人の採用に踏み切り、営業マンの仕事からアフターサービスを含む作業を完全に分離しました。
今までの『まごの手宅配便』は営業が兼任するサービスでしたから、できる範囲も精度も今一つでしたが、専門のサービススタッフを採用していくことで、サービスの質も格段に上がりました。
さらに女性スタッフを増やすことで、室内の清掃などの屋内のサービスを望んでいた新たな会員様を獲得できるようになりました。
営業の増員を図るべきではという意見もありました。しかし、ここをしっかりできる会社をつくれば、戦略的に考えても将来必ず大きな強みになることを確信していたので、営業より専門スタッフへの投資を選んだのです。
この時点で、大きなリフォームの需要が発生する10年ごとの谷間期間を、営業ではなく専門のスタッフがフォローする体制が確立されました。お客様の住宅に関する相談窓口を『まごの手宅配便』が全て担うことになったのです。