「営業マン」時代に感じた、たくさんの疑問や不満
この連載では、筆者が「ヘビーリピーターを生む最強の営業の仕組み」をどうして思いつき、実践するに至ったかをお話ししたいと思います。
私たちがやってきたことは、簡単に言ってしまえば「万人が利用しやすいサービスを提供することで新規顧客を獲得し、手厚いフォローでヘビーリピーターへと育成する」ことです。
そのための仕組みづくりとして『まごの手宅配便』や「チームでのフォロー体制」「営業マンの評価方法」などを整備してきました。これらの仕組みをつくったのは、「お客様のため」と「自社の営業マンのため」です。
私は長年、営業畑を歩いてきました。その中で、たくさんの疑問や不満、反省などを抱いてきました。
営業マンの仕事は「受注を取ってくること」がメインです。メインというより、私が働いてきた会社では、どこも「それのみ」でした。今日、何件契約を取ったか、今月、何件契約が取れたかで、その営業マンの評価やインセンティブが決まります。
これでは、新規開拓営業が活動の中心となり既存顧客のフォローをしないわけですから、リピーターはほとんどおらず、一回きりの受注で終わるものばかりです。言い方は悪いですが、お客様とはそれきりで縁が切れてしまうような状態でした。必然的に、新規顧客を開拓する以外に新たな受注を取る方法がなくなり負のサイクルに陥っていきます。
新規開拓をするとなると、営業マンは初めてのお宅に飛び込み営業をするしかなくなります。勇気を出してインターフォンを押すのですが、たいていは無視されるか、邪険にされるかです。冷たい断りを浴び続けていると、どんな営業マンだって心がすさんできます。そして、辞めたくなるのです。
実際、私が最初にいた会社では10人の営業マンが入ってきて、1年後に残っているのは1人いるか、いないかでした。他ならぬ営業マンも会社にとっては使い捨てのように思えました。
これでは新規開拓をやり続けるなんて現実的ではない。いきなり押しかけられて、喜んでくれるお客様などいるはずがない。それに、どんなに優秀な営業マンでも、同じエリアで同じ商品を売り続けるかぎり、いつか頭打ちになってしまう。
「一度契約したお客様のところへは顔を出すな」!?
そこで起業を機に思いついたのが『まごの手宅配便』です。多くの人が潜在的に持っているニーズに低価格で応えるサービスがあれば、みんな「使ってみたい」と思ってくれるはずだ、直接利益を上げるのではなく、営業するきっかけをつくるには十分だと考えたのです。
元々、家を持っているお客様は遅かれ早かれリフォームが必要なことを認識している人がほとんどで、ただ「今すぐではない」という状態です。教育費・車の買い替えなどが優先され、よほど大変なことが起きないかぎり重い腰を上げません。リフォームの必要性は伝わっていても、とりあえず「うちは結構」と断られてしまいます。
しかし、草刈りや窓ふき、網戸の張り替えなどの細々とした作業なら、必要とする人がきっとたくさんいると思いました。
そこで「かゆいところに手が届く『まごの手宅配便』」と称して簡単な作業内容の一覧表を作り地域一帯にポスティングしたところ、私の予想した通り、たくさんのお客様からの問い合わせや発注がありました。
お客様のお宅で作業している中で、「お宅って何の会社?」と聞いてもらえることが増えました。「実は工務店です。リフォームがメインなのですが、新築などもやっています」と答えることで、会社の認知度アップにも繋がっていきました。
『まごの手宅配便』を始めたことによって、多くの企業が抱える新規開拓の悩みや知名度アップの問題がクリアできました。
顧客開拓を進める一方で、社員も集めていかなければなりません。私は会社に勤めていた時代から人並み以上の成績は出していましたし、要職を務めていましたので仕事に対する自信はありましたが、実際に起業してみれば、会社勤めをしていたときとは比べものにならないほどのプレッシャーです。
売れなければ即倒産。新規開拓だけで売上が見込める即戦力の営業を採用するなんてことは、起業したばかりの会社ではまず無理です。そもそも、面接に来てくれる人自体がいません。結局は自分が一人で訪問販売するところからのスタートです。
それでも一人二人と営業を採用することができました。ただ現実は営業をする以前の問題で、「こんなに大変だとは思いませんでした」と、外回りを始めて一日二日で辞めたいとなるのです。
これでは従来の訪問販売営業のスタイルで営業組織をつくることは無理だなと感じました。営業の経験がない人や精神力がそこまで強くない人でも売れる方法がないかを真剣に考えざるを得ませんでした。
すぐに弱音を吐く営業マンを見ていて、自分が初めて営業の外回りをしたときはどうだったかと振り返りました。
そのとき、「一度契約したお客様のところには顔を出すな」と言われたことと、当時感じた違和感を思い出したのです。今でもさほど変わっていない現状を前に、この違和感をなくすことが売上を上げるヒントになるのではと、なぜかピンときました。
この話は次回に続きます。