本記事のポイント
・今回の暴落はショックが引き起こしたものではない
・この急落は理屈を超えた相場
・この先の展開について
今回の暴落はショックが引き起こしたものではない
日経平均株価が前週末比4,451円(12%)安の3万1,458円まで売られる歴史的な大暴落を演じた。下落幅は米国で起きたブラックマンデー翌日の1987年10月20日の3,836円安を超えて、過去最大となった。日経平均のこれまでの最大の下げはブラックマンデーの翌日、つまり火曜日だったので、これが日本株にとっては正真正銘のブラックマンデーだ。だから筆者はこの下げを「ブラックマンデーII」、もしくは「日本版ブラックマンデー」と命名することにした。
名前なんてどうでもいい、と思われるだろうか。そうではない。「名は体を表す」という。「名は体を表す」とは「実体――そのものの本当の姿・ありのままの姿――が名前に表れている」ということだ。歴史上、名を刻んだ大暴落には「〇〇ショック」という名称が多い。なにかショッキングな事件が起きて、株価が暴落することが多いからである。古くはスターリン・ショック、ニクソン・ショック、記憶に新しいところではリーマン・ショックにチャイナ・ショック、VIXショックなんていうのもあった。
ところが史上最大の暴落であるブラックマンデーには「ショック」という名がついていない。ショッキングな事件が起きたわけでもないのに、突然、株価が大暴落したからだ。ここに相場の本質がある。ショックが起きて株が下げるのは、いわば当然だ。しかし、「誰の目にもわかる」ショックがなくても、株は下がる――しかも、暴落するのである。
今回の暴落はショックが引き起こしたものではない。だから、考えようによってはそれだけ深刻なものとも言える。根底には日銀の金融政策変更の影響があるのだろう。前回記事『サプライズでもショックでもない…「日経平均2,000円暴落」の根本原因【ストラテジストが解説】』に書いたとおり、「大きな舞台装置」が転換するなかで金融マーケットの生じた「きしみ」が徐々に増幅された結果であろう。
この急落は理屈を超えた相場
しかし、なぜこれほどの急落になったのか? 過去に何度も書いてきたから、そのメカニズムは明々白々だ。ソロスの再帰性理論で説明できる。著名ヘッジ・ファンド投資家であるジョージ・ソロス氏が唱えた「リフレキシビティ」という理論がある。日本語では「再帰性」とか「相互作用性」と訳されている。
本来は投資家の判断や認識によって証券価格が形成されるはずだが、証券価格のトレンド自体が投資家の判断に影響をおよぼすというものだ。強いトレンドが相場の正当性を投資家に認識させ、さらに価格が上がる・下がる自己増強メカニズムをソロス氏は再帰性と呼んだ。下げ局面では、値下がり自体が投資家心理の不安を増幅させる。市場の動きそのものが最大の売り材料なのである。
通常の価格の動きは、ファンダメンタルズ⇒投資家の判断⇒価格の動き、という順で相場が形成される。
しかし、最後の「市場価格の動き」がもう一度、「投資家の判断」に跳ね返ってきてしまう(再帰性)と、もうファンダメンタルズなどは関係なく、そこだけでループが回り続けるようになる。
下がるから売る、売るからもっと下がる、という悪循環のループが回り続ける。何度も書いている。こういう相場はすでに理屈を超えている。バリュエーションもテクニカルも役には立たない。行くとこまで行くしかない。ただ、そういう意味では日経平均3万円というのは絶大な心理的節目なので、3万円割れは目をつぶって買うところだろう。
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