本記事のポイント
・ミスプライスがつくのは極めて自然
・日経平均2,000円超の暴落は金融政策の方向性転換のきしみ
・波乱を呼ぶのは国際金融システムを取巻く大きなフレームワークがきしむとき
ミスプライスがつくのは極めて自然
筆者はこれまで何度も、さまざまな局面で「こんな相場は間違っている」と述べてきた。
一方、市場でついたどんな値でも、それは正しいのだという意見を大半の市場関係者は金科玉条として持っている。相場に関わる者にとってマーケットは絶対である。小賢しい己の相場観が外れたからといって「市場のほうが間違っている」というのは言語道断であり、マーケットに携わる資格がない。
では、筆者が「こんな相場は間違っている」というのは天に唾するものなのか。
ふたつのことが同時に成り立つ。市場は間違いもするし、その間違い自体も、また正しい。禅問答のように聞こえるかもしれないが、「その間違い自体も、また正しい」を言い直すならば、「間違うことも自然である」、あるいは「当然のように間違うこともある」ということだ。
市場の価格形成に、人間の思考や感情が反映されるのならば、人間が間違う以上、当然のように間違った値がつくこともある。ミスプライスがつくのは極めて自然なことである。
日経平均2,000円超の暴落は金融政策の方向性転換のきしみ
日経平均が2,000円超の暴落を演じた。明らかに売られ過ぎであり、市場は過剰反応であり、3万6,000円割れというのはミスプライスである。しかし、それがこのタイミングで起きたことは至極当然であり、起こり得るべくして起きた劇的な動きであった。
日銀が長年続けてきた金融緩和から金融引き締めへと政策を転換させた。これからは金利のある世界、そしてマネーの量が絞られていく世界に日本は足を踏み出していく。他方、欧米では反対に利下げが実施されていく。この金融政策の方向性ひとつとっても、これまでの舞台装置が大きく転換する。そこではさまざまな領域において強烈な「ねじれ」の力が働く。複雑な金融資本市場のなかで、その「ねじれ」の作用は簡単にとらえることは難しい。
これらの金融政策の方向性は従前から見えていたものだから、「サプライズ」でもなければ「ショック」でもない。しかし、それが実行の段となると、われわれには想像もつかない力学が市場の節々に圧力をかけるのだろう。その「きしみ」が今日の2,000円安である。
今回の暴落の背景として巷間でいわれる「トリプルショック」というのは、あくまでも表層的な理屈付けである。いわく、日銀の利上げが円高を呼び、そこに米国の景気後退懸念が重なった云々、である。繰り返すが、どれもいまに始まった話ではなく、それこそ米国の景気後退懸念など何度も蒸し返されてきた。
今回の日経平均2,216円安という下げ幅は1987年10月の歴史的株価暴落「ブラックマンデー」に次いで2番目の大きさだという。日経平均が4万円になったので値幅が大きく出るのは当然で、率にすれば5%程度、ブラックマンデーとは比べるべくもない。
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