個人消費支出は横ばい
2024年6月の食料品およびエネルギーを除いたコアPCE(個人消費支出)デフレーターは、前年比+2.6%と5月(同+2.6%)から横ばいとなりました(図表5)。
内訳では、コア財(5月︓前年比▲1.1%→6月︓同▲0.9%)の下落幅が縮小したものの、コアサービス(5月︓前年比+4.0%→6月︓同+3.9%)はわずかながら伸びが鈍化しました。
コアサービスのうち、ウェイトの高い住宅サービス(住居家賃や帰属家賃)のインフレ率低下は依然として緩やかなものにとどまっているものの、新規契約物件の家賃を示すZillow家賃指数(前年比)は、コロナ禍前の水準に回帰しつつあることから、住宅サービスのインフレ率低下ペースは、加速し始める可能性があります(図表6)。
物価の瞬間風速を示す前月比では、6月のコアPCEデフレーターは+0.18%(5月︓+0.13%)と、概ね市場予想通りの結果となりました(図表7)。
FRBがインフレのモメンタムを測るうえで重視している3ヵ月前比年率値は、+2.31%(5月︓+2.93%)と3ヵ月連続で伸びが減速し、急上昇した3月(+4.48%)から大きく鈍化しました。
また、6ヵ月前比年率値では+3.38%(5月︓+3.32%)と横ばいとなったものの、7月以降は、高い伸びを示した1-3月期との比較となるため、3%割れが視野に入るとみられます。
この結果、4-6月期のコアPCEデフレーターは、引き続きインフレ圧力が和らいでいるとの見方を裏付けるものとなり、FRBが9月のFOMCで利下げを決定することを正当化する結果といえます。
もっとも、中⻑期的な観点からは、大統領選挙の結果がFRBの政策判断に与える可能性も無視できません。トランプ候補は、不法移⺠の取り締まりや、中国からの輸入品に関税を課すことなどを掲げています。
こうした政策が実現すれば、労働需給の逼迫化や輸入物価の上昇を通じて、インフレが再燃し、6月にFRBがドットチャートで示した、来年以降の利下げシナリオ(2025年、2026年はそれぞれ1%の利下げ見通し)は修正を迫られる可能性があります。