競争が激しい食品業界独特の傾向が存在
前回の続きです。データを示すことはできませんが、私の経験では、1990年代のカルピスウォーター、2003年のアサヒ飲料のワンダがあります。両社ともこのヒットでまったく別の会社に生まれ変わってしまいました。今は両社とも上場していませんが。
ここまでは実は普通の関係で、以上のような状況ならば、売上げの伸びと利益の伸びは同方向になります。問題は、食品企業の場合はそれだけではないということです。まずは、市場の競争環境が大きく影響します。類似商品による競争が激しい場合には、他の企業が取る戦略によって価格競争や余計な経費がかかります。
ただし、これはきわめて重要なのですが、なかなか外部からはわかりにくい面があります。自社商品を強力にプッシュしたが、ライバルも対抗してきたときは、売上高はそれなりに増えても、利益はむしろ大きく減ることもあります。一方、ライバルがあるカテゴリーで強力な販売活動をしてくると、対抗上自社も行うのですが、他社の勢いがすごいと、売上げが伸び悩んで、利益が大きく悪化することもあります。
逆に、無理しない販売体制を敷いたことによって、売上げは多少減少したが、利益はきちんと増えたということもあります。
以上から、特に食品株はこの傾向がきわめて強く、食品株に関しては、さほど月次をフォローする意味合いはありません。これは、商品で競争している場合、戦いの場がコンビニ、スーパーなど、限定されているためで、外食や小売りのように新店の出現による局地戦はあったとしても、全面戦争になりにくい業種と、食品の違いが大きいと思います。
それゆえ、狭い市場において単品で競争している牛丼店の場合も、食品企業と同じように外食産業でありながら月次が使いにくい業態ということができます。それでも私は、伊藤園やゼンショーの月次をフォローしています。それは何のためかというと、飲料業界や小売業、外食産業の状況を知るためです。当書は超簡単な月次の使い方がテーマですので、これ以上この話には触れません。
外食産業は売上げと利益の関係がバラバラ!?
また、別に、外食企業でも売上げと利益の関係にバラつきのある会社もあります。ドトール・日レスホールディングス(3087)はそんな会社の一つです。この会社は年度で見ても四半期で見ても、売上げと利益の関係がバラバラです。このような会社は月次を見ていて良くなったからと言って、利益が良くなるとは限りません。よって、月次データがあまり役に立たない会社ということになります。
もっとも本当に細かく見ていけば、それなりに明確な理由があって、実は月次データが使える可能性もありますが、これも超簡単というわけには行きませんので、あまりお奨めできません。もっとも、この会社の場合、これまで説明してきた会社と違って、売上高が急速に増えた局面がありません。
つまり、月次データを用いる方法は、月次が大きく変動する場合には有効ですが、小幅変動で多少良くなったり、多少悪くなったりする程度では使えません。そこで、このような会社であっても将来月次が大きく変動した場合は、使える可能性があります。
以上、今回は月次を見る意味があるケース、無いケースの見分け方を説明しました。