株式投資の判断基準となる「売上げと利益の伸び」の関係

今回は、株式投資の判断基準となる「売上げと利益の伸び」が一致しない理由について見ていきます。※本連載は、証券アナリスト・有賀泰夫氏の著書『やり方さえわかれば、初心者でも株式投資で確実に勝てる』(日本食糧新聞社)の中から一部を抜粋し、株式投資で勝つための「月次データ」の活用法をご紹介します。

売上げと利益の伸びがリンクしやすい業界もあるが…

前回の続きです。このように、完全に売上げの伸びと利益の伸びが一致するわけではありませんが、いくつかパターン分けすれば、売上げと利益の伸びのズレを説明できます。

 

一方、四半期データの場合の売上げと利益の伸びのズレは、通期の場合とは若干違う解釈が必要になります。2010年第1四半期(1Q)、第2四半期(2Q)、第3四半期(3Q)の売上高の伸び率と営業利益の伸び率の関係がいびつです。つまり、1Qの売上げと利益の伸び率の関係を基準とすると、2Qには売上高の伸び率は1Qより10%pt低下しているにもかかわらず、営業利益の伸び率はほぼ同じになっています。

 

逆に3Qの売上高伸び率は2Qの売上高伸び率と大差がないにもかかわらず、利益は2ケタ増益から2ケタ減益と大きく悪化しています。これは、普通の企業行動として、悪くなりかけたときは何とかして利益を確保しようとして、経費を抑制する手を打ちます。しかし、そういった政策には費用繰り延べ的なものも多く、次の期には反動で費用が増えるということがあります。

 

それゆえ、2Qの数字で安心してはダメということで、売上高と利益の連動性を否定するものではありません。1Q、2Qと既存店月次が悪化し、3Qも悪化が継続したためにそうなったわけですので、むしろ、これは既存店月次が重要ということの証明にもなります。

 

また、2010年1Qでは35.6%増収で、14.1%営業増益ですが、その後、2011年1Qでは25.3%増収、36.0%営業増益となっています。つまり、この2つを取れば、売上げと利益の伸び率の関係は逆転しています。これは、すでに年度のところでも説明したように悪化期と改善期の違いです。

 

つまり、絶好調のときは事業拡大のため、人件費を中心に費用を増やしています。そのため、売上げの伸びが低下すると、利益の伸びは大幅に下がります。一方、改善期は逆で、それまでに固定費を抑制していますから、売上げの伸びが低くても、利益が増える体質になっています。そのため、売上げの伸びが上振れると、利益が急に増えるのです。株価で言えば、ここが一番おいしいときでしょう。

 

次は王将フードサービスを見てみましょう。まず、年度ごとの売上高と営業利益の伸びを見てみましょう。売上高の伸びが低いと減益のこともありますが、売上高の伸びが高まると増益率も大きく高まります。これは四半期でも比較的キレイに当てはまります。このように外食産業の場合、比較的売上げの伸びと利益の伸びがリンクするケースが多いものです。

「業績が絶好調でも株価が低迷する」食品企業の特殊性

一方、食品企業の場合はかならずしも売上げと利益が一致しませんので、注意が必要です。例として伊藤園(2593)を取り上げて説明します。【図表】をご覧ください。年度で見ても四半期で見ても、売上げと利益の伸びが一致しない期が多くみられます。

 

基本的には安売りをしてたくさん売れても利益は伸びず、安売りしないで売れれば、利益が多く出るためです。それでは、売上げと利益の関係は何によって決まるかというと、これにもいくつか要因があります。

 

一つは天候要因です。当然、夏が暑ければ、冷たい飲料が大きく売上げを伸ばします。一方、ヒット商品が出て、好調な場合はまったく事情は異なります。この場合には、全体と同時に、個別商品、カテゴリーの月次フォローがそれなりに意味を持ちます。

 

ただし、一般的な傾向として、実際は前年同月比ではなく、前の月に比べてどうであったかが重要で、売上げがピークアウトしてしまうと、株価もピークアウトする傾向があります。しかし、業績や月次は前年同期比で見ますから、業績が絶好調にもかかわらず、株価が低迷することはよくあります。

 

【図表】売上げと利益の伸び率の関係

証券アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

埼玉大学理工学部生化学科卒業。新日本証券に入社(現みずほ証券)。クレディ・リヨネ証券、UFJキャピタルマーケッツ証券、三菱UFJ証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)などで、食品、飲料、卸売業のアナリストとして活躍。特に卸売業のアナリストとしては第一人者。2009年H&Lリサーチ設立。代表。現在は食品、食品卸、外食、小売り、ネット企業など幅広い銘柄をカバー。日経人気アナリストランキングで常に上位をキープし続ける。株式会社アドバンスト・リサーチ・ジャパンマネージング・ディレクター。

著者紹介

連載株式投資で勝つための「月次データ」活用法

本連載は、2016年5月10日刊行の書籍『やり方さえわかれば、初心者でも株式投資で確実に勝てる』(日本食糧新聞社)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

やり方さえわかれば、 初心者でも株式投資で確実に勝てる

やり方さえわかれば、 初心者でも株式投資で確実に勝てる

有賀 泰夫

日本食糧新聞社

投資家の多くは、株式の本質を知らないで投資し、単なるギャンブルと化していますが、株式投資はギャンブルではありません。本書は、株式投資の入門書ではありませんが、株式投資のことを知らない方でも、どうすればいいかがわ…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧