月次データが「業績の先行指標」にならない会社も存在
今回は、月次データを利用する場合にどうしても欠かせないチェックについて触れます。それは、月次データが役に立つ会社か、役に立たない会社かの見分け方です。
えっ!! 月次データが役に立たない会社があるんですか? そうなんです。すでに何度も繰り返していますが、月次データは業績の先行指標だから利用価値があるのです。しかし、中には業績の先行指標として役に立たないケースもあります。それをどう見分けるかをお話しします。
基本的には、月次データからわかるのは、売上高の伸び率です。しかし、業績予想で本当に知りたいのは、利益の伸び率です。つまり、売上高の伸び率と利益の伸び率の関係が弱い企業は、月次データからは業績の予測ができませんから、月次データはそれほど有効ではありません。ここまで分析したいくつかの銘柄で売上高と利益の関係を見ていきましょう。
まずはトリドールです。【図表】のトリドールの業績表をご覧ください。年度の売上高と営業利益の伸び率を見ると、2008/3期から2010/3期は売上高が50%前後の伸び率に対して、営業利益は50~100%の伸び率となっています。かならずしも、売上高の伸び率が高ければ利益の伸び率が高いわけではありませんが、違和感のない範囲に収まっていると言えるでしょう。
「売上げ高」と「利益」の伸び率の関係性とは?
2011/3期は売上げの伸びが前年度の半分以下となって、営業利益は微減益に転じています。ところが、2012/3期の売上高の伸び率は2011/3期とほとんど変わらないにもかかわらず、営業利益は40%を超える大幅な増益に転じています。とは言っても、売上げと利益の伸び率の関係性が低いためと一概には言えません。
これは、同じ伸び率でも売上高が減速していく時は、利益へのマイナスインパクトが大きく、加速していくと、利益へのプラスインパクトが大きくなるという現象に過ぎません。
売上高の伸び率が大きければ、企業は強気になって人を採用し、設備を増やします。しかし、売上高の伸び率が低下し始めると、しばらくは売上げの伸びを費用の伸びが上回るため、利益は減少しがちになります。
一方、そのような厳しい状況が続けば、企業は当然採用や設備投資を抑制します。すると、費用の伸びを売上げの伸びが上回るようになって、増益に転じるというものです。2013/3期はさらに売上げの伸び率が低下したことで、費用減のスピードと売上げ減のスピードが同程度になり、利益がほとんど増えませんでした。
このように、完全に売上げの伸びと利益の伸びが一致するわけではありませんが、いくつかパターン分けすれば、売上げと利益の伸びのズレを説明できます。
【図表】 売上げと利益の伸び率の関係