(※写真はイメージです/PIXTA)

「株式会社」がビジネスを行うには「資金」が必要です。資金には、株主からお金を集めた「資本」と、銀行からお金を借りた「負債」の2種類があり、集めたお金は同じ目的のために使われます。しかし、株主と銀行、それぞれの視点から眺めると、それぞれ異なる事情が見えてきます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

銀行の心配は「株主有限責任」に伴う貸倒損失

では、株式会社が大損をして借金が返せなくなったとき、株主が銀行に借金を返す必要があるのでしょうか? 法律は「その必要はない」と定めています。「株主有限責任」という制度です。

 

この制度を作った人は、2つのことを考えたようです。ひとつは「株式会社が巨額の損失を被ったときに、銀行から零細株主に巨額の請求書が行くのはかわいそうだ」ということです。会社が巨額の損失を被りそうか否か、銀行のほうが零細株主よりも予想できるだろう、ということもあるでしょう。

 

もうひとつは「株主有限責任の制度がないと、投資家が安心して株を買えないから、株式会社を作ることがむずかしくなる」ということです。「零細株主が株式投資で儲けようと思って気楽に投資をしたら、銀行から巨額の請求書を突きつけられて破産した」などということが起きると、だれも株式投資をしなくなってしまうかもしれないからです。

 

筆者は元銀行員ですから、この制度が好きではありませんが、日本経済のために作られた制度ですから仕方ありません。そうした制度がある以上、銀行としても自衛策を講じる必要があるわけです。

 

ひとつは、貸す前に企業のことをしっかり調べて、借金が返済できない事態に陥る可能性が高そうなら貸さない、ということです。

 

もうひとつは、担保や保証によって万が一の場合でも貸出金が回収できるようにする、ということです。

 

担保というのは「我が社が借金を返せない場合は、我が社の工場を勝手に売却して返済に使ってください」といった文言を借用証書に書き込むことです。借金が返せないということは、銀行業界全体としては損をするわけですが、担保を持っている銀行はしっかり回収できて、担保のない銀行が大きく損をする、ということになるわけですね。

 

ちなみに、借り手企業が多くの銀行に同じ約束をしていると困るので、不動産の場合には「登記」をすることになります。役所の書類に「我が銀行がこの工場を担保に取っているよ」と書き込むことで、ほかの銀行よりも優先的に工場を売却する権利を持つことになるのです。

 

保証というのは「借り手企業が借金を返せない場合、我が社が代わりに返済します」という書類を他社から受け取るものです。親会社が子会社の借金の補償をする、という場合が多いようです。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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