同居を提案する娘に「家を離れたくない…」
株式会社LIFULL seniorが親の死を経験した方に実施した「親と話したい“親の今後”にまつわる話題」に関する調査によると、97.3%が「生前、親の今後に関する会話が不十分であった」と回答。親との生前のコミュニケーションの取り方の難しさが伺えた。
現代はだれもが多忙であり、時間が取りにくいということもあるだろうが、家族という絆があることから、つい会話をおろそかにしてしまうのかもしれない。
40代のある男性は、母親を亡くし、ひとり実家に残る70代の父親を気にかけていた。
「私は静岡県の出身です。私は仕事の関係で、都内に自分の妻と子どもと暮らしており、3歳年上の姉は、配偶者の郷里の名古屋に暮らしています。両親は私と姉が独立してから、20年以上2人暮らしだったのですが、残念ながら、3年前に母が先立ってしまい…」
ひとり残された実家の父親を心配し、男性の姉夫婦が同居を持ち掛けたというが、父親は首を縦に振らなかった。
「住み慣れた場所を離れたくないということでした」
男性も姉も、折を見て電話をするなどしていたが、忙しさにかまけ、間隔が空くようになってしまった。
「ところが、数ヵ月前、突然地元のご近所の方から連絡があって、父親が倒れたと…」
庭の手入れの最中に倒れたと思われる父親は、ご近所の方が呼んだ救急車で総合病院へ。脳梗塞との診断だった。
「残念ながら、その後、意識が戻らぬまま亡くなりました。ひとり暮らしになって、生活が不規則になっていたのが影響したのかもしれません…」
身内だけの小ぢんまりとした葬儀をすませると、男性は姉と話し合い、実家を売却して財産を半分ずつ分けることにした。とはいえ、お互い日常の生活がある。なんだかんだといって、父親を失った実家は、空き家のまましばらく放置されていた。
ところが、またご近所さんから突然の連絡があったのである。