(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進展する日本では、高齢者施設へ入所する人も増えている。しかし、問題は費用だ。入居者本人のお金で賄えればいいが、そうでないケースはだれかが肩代わりするしかない。実情を見ていく。

子供世代にのしかかる、親の「老人ホーム入居費用」

長寿化が進む日本では、老人ホームへ入居する高齢者が増えている。しかし、なかにはホームへの入居のため、子世代から金銭的な援助を受けている人もいる。

 

横浜市在住の50代独身女性は、毎月6万円ほどの費用を負担しているという。

 

「80代の母に、老人ホームへ入居してもらいました。とてもではないですが、自宅介護はムリです。私も働いて家賃を納めないと生きていけないので…」

 

女性の父親は5年前に死去。専業主婦だったという母親は手取りでおよそ月14万円の年金を受け取っている。

 

「2年前に自宅で転倒し、腰を痛めてしまったのです。それまでは身の回りのことができていたのですが…」

 

「最初は、母の年金だけで入所できる特養を探しました。でも、空きがなかったのです。私が介護するの無理なので、結局、いまの有料老人ホームへ入居することになりました」

 

不足分の費用は、ひとり娘である女性が毎月6万円ほど負担しているという。

 

株式会社Speee/「ケアスル 介護」の調査によると、老人ホーム費用を主に払うのは「入居者本人」が64.0%だが、3割強は、入居者以外の人が肩代わりをしている。そのうち「入居者の子ども」が全体の24.8%と圧倒的に多い。

 

老人ホームへの入所のための費用は、初期費用となる入居一時金と、毎月かかる月額費用を考える必要がある。入居一時金はゼロ~数千万円、富裕層向けホームになると億単位になるほど幅広い。入居一時金=家賃の前払いという特性上、入居一時金がないホームのほうがお得ともいいきれない。

 

月額費用には、家賃のほか、管理費や水道光熱費、介護費などが含まれるが、内容はホームによってさまざまだ。何が含まれ、何が含まれないのか、確認する必要がある。

 

おむつなどの日常品や理髪代などは、たいてい月額費用には含まれておらず、別途請求されることが多い。月額費用とは別に、毎月2~3万円程度かかるのが一般的だといえる。

「これ以上値上げされたら、私の収入では背負いきれません」

女性は50代正社員だが、毎月6万円の出費はかなりの痛手だ。

 

「私は50代。60歳の定年まで10年もありません。そのあとは嘱託になると思います。いまも生活を切り詰めてなんとかやりくりしていますが、もし母が私が60歳を過ぎても施設で暮らすとしたら…」

 

女性はうつむく。

 

「長生きしてもらえて、ありがたいと思わなければいけないのでしょうけど…」

 

自分の老後資産形成に着手すべきタイミングで、先の見えない介護に自身の収入を費やしている子世代は少なくない。

 

一方で、また別の問題も生じている。インフレによる値上げだ。

 

「この春、老人ホームの請求金額を見て、思わず悲鳴を上げてしまいました…」

 

物価高が続くなか、月額の費用が食費や水道光熱費などを含め、4万円も値上げされていたという。それだけではない。その他諸費用も物価高の影響で値上げされており、前年から比べると8万円増に。

 

だが、値上げすることで介護施設が維持できるならまだいい。東京商工リサーチによると、2024年上半期に倒産した介護事業者は全国で81件。上半期では過去最高を記録している。その多くが売上不振によるものであり、その主な理由が人材不足と光熱費などの物価高騰の影響だという。

 

月10万円を超える費用負担がのしかかってきた女性は、うっすらと涙を浮かべる。

 

「もしこれ以上の値上げされたら、私の収入では背負いきれません。転居も検討しないと」

「母には私がいますが、私はだれにも助けてもらえない。どうしたらいいのでしょう…」

 

だが、このインフレ状況を見る限り、女性が思い描く最悪な状況が現実のものになるかもしれない。そうなれば、自身の老後どころではない。

 

いまの日本では、高齢者のみならず、働き盛りの世代も苦しい立場に立たされている。

 

[参照]
株式会社Speee「費用は誰が支払う?「ケアスル 介護」にて介護施設の費用に関するアンケートを実施」

 

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