(※画像はイメージです/PIXTA)

不動産投資初心者に‍ありがちなのが「価格の安さ」に目が向いてしまい、そこに潜む「ウィークポイント」を見逃してしまうことです。格安の不動産には必ず理由があり、面倒な問題がついて回るなら、決してお買い得とはいえません。今回は、土地の価値を大きく左右する接道の問題について見ていきます。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

せっかく買った土地、道幅が狭くて建物が建てられない!?

現在の日本の法律では、幅4m以上の道路に、最低2m以上接道していない土地の場合、建物は建てられません。これを「接道義務」といいますが、この条件が満たされないと、正式に建築確認が下りず、適法に建物を建てることができないのです。

 

幅4mというのは、車ですれ違うことが可能な、かなり広い道路です。しかし、道路の幅が4mに満たない場合でも、自分の敷地内を道路として提供し、その分後退することによって、建築許可が下りる「セットバック」という制度があります。

 

たとえば、道路が2.8mだった場合、不足分の1.2mを、左右の敷地内から60cmずつ道路として提供すれば、細い道路でも建物が建てられるようになるのです。そのため、広い道路に面していた場合、セットバックがいらないぶん、建物を広く建てられるという利点があります。

建設資材の運搬、車両が入れず「人力」になるケースも

道路付けに関しては、もう一点、見落としがちなポイントがあります。車両通行できない道路に面していた場合、建て替えの際にトラック等での建設資材の搬入ができないため、大量の資材を人力で運ぶことになってしまいます。

 

簡単なリフォームなら問題ありませんが、建て替えをする場合、最終的な建築費用が大幅に増額してしまう可能性があるので、注意が必要なのです。

 

さらに私道の場合、物理的に通行可能かどうかという問題とは別に、通行における権利的な問題も生じます。

「通らせていただけますか…?」接道が「私道」の場合の問題点

道路には、公の道である「公道」と、個人の所有する土地である「私道」の2つがあります。

 

土地に接しているのが公道であれば、当然、国の持っている道路なのでなにも問題ありません。一方、私道の場合は「人の土地を通っていいのかどうか」という問題が生じます。

 

ただし民法210条では、周りが囲われており、道路に接していない囲繞地(いにょうち)は通行権を認めるという制度があります。しかし、この通行権という制度はかなり限定的です。基本的に、私有財産を法律によって制限する権利なので、周りの人の迷惑にならない程度で通行権を認めるのが基本です。そのため、例外的に車の通行権が認められる裁判例もありますが、原則として徒歩前提になってしまいます。

 

一方で、私道でありながら「行政に認定されてる道路」というものもあるので、不動産を購入する際には、よく不動産会社・仲介会社に話を聞いたうえで、どういったリスクがあるのかを考えていくことが必要です。

「水道管や下水管が整備できない!」こちらも私道にありがち

私道問題によくある例として、私道の通行掘削承諾が取れないというケースがあります。

 

建物を建てるためには、①道路と接していること、②その道路が利用できること、③その道路を掘り起こしてもいいことが、建築確認のときに要求されます。通行できないと立ち入れないですし、掘削できないと水道管や下水管が整備できないので、私道の所有者から許可を取る必要があります。

 

この問題が多いのが、分譲住宅のように、5~6戸の新築戸建てを持っている人たちが一本の私道を共有している土地です。私道が共有状態だと、仮に10名が共有者だった場合、10名全員から通行掘削承諾を取らないといけないのが原則です。

植木鉢や自転車で通行が妨害される…→最悪は裁判に

そのほか、植木鉢や自転車を置かれて、通行が事実上妨害されるといった近隣トラブルがあります。そういった近隣トラブルを裁判に持ち込む場合、妨害を排除する側が裁判手続きを起こさなければいけません。

 

弁護士費用や裁判費用などの重たいコストを負担しなければならないのと共に、新築建築のスケジュールがどんどん遅延していくという問題もあります。土地を買ったはいいものの、隣人との予想外のトラブルで建築が進まず、融資の返済に困ってしまうという事態にもなりかねません。こんな問題が定期的に出てしまうのが私道トラブルなのです。

 

 

山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦

 

 

 

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