(※写真はイメージです/PIXTA)

離婚して子連れで実家に戻った女性は、会社員として働きながら、両親を介護し、看取りました。しかし、父親が遺した遺言できょうだいといさかいが起こり、絶縁状態に。そして今度、母親が遺した遺言を巡り、再びきょうだいとのいさかいが起こる可能性があって…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、について解説します。

母亡きあとにできる遺留分対策は、ズバリ「売却」

母親が亡くなった現状において、いまからできる遺留分侵害額請求の対策の第一選択肢は「時価の確定」です。

 

不動産は評価の仕方が複数あり、また、不動産鑑定士による周辺の取引事例を集めた評価も、該当の不動産の評価そのものではありません。その結果、遺留分の侵害額請求の際、「この土地の価格はこの程度だ」「いいや、それより高いはずだから、遺留分ももっと多いはずだ!」などと、不動産価格を巡って長い争いになりやすいのです。

 

佐藤さんの自宅敷地は100坪以上と広いものの、公道に接している間口は2.5mしかなく、建築できる建物に制限があることから、路線価評価以下でしか売れそうにありません。

 

この状況を放置すれば、土地の特殊事情を考慮しない「時価」を巡る争いになることは目に見えています。しかし、売却して不動産価格の「時価」を確定させれば、確実な遺留分対策になるのです。

「これで争う余地がなくなりました」

幸運なことに、佐藤さんが相続した不動産は、路線価の9割程度で売却が決まり、遺留分の額を確定させることができました。そのうえで、遺言書の存在を、これから姉と弟に知らせることになります。

 

いちばんの心配事である遺留分について、争う余地がなくなったことで、佐藤さんは安堵されました。

 

土地の相続をめぐる同様のトラブルは、決して少なくありません。売却・住み替えの決断は必要ですが、不動産価格の算定を巡って何年も調停をするより、速やかに不売却して「時価」を確定させるという方法は、時間と労力の節約、ストレスの軽減という点からも、非常に有益だといえます。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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