平穏な日々を送っているある女性は、親族を名乗る見知らぬ男性からの連絡で、突然面倒な相続問題に巻き込まれてしまいます。相続放棄することで抜け出そうとしますが、それでは大変な手間がかかることがわかり…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。
見知らぬ親族からかかってきた、突然の電話
今回の相談者は、50代の主婦の田中さんです。突然巻き込まれた相続の問題に困惑し、対処法を相談したいとのことで、筆者の事務所を訪れました。
「先日、知らない方から突然電話があり、すでに亡くなっている私の実父の相続の件で話があるといわれたのです」
田中さんは弟と2人きょうだいで、父親は田中さんが3歳、弟が1歳のとき死別しています。その後、母親は再婚し、田中さんきょうだいは母親の再婚相手の子どもとして育てられました。実父の記憶はまったくないといいます。
「電話で聞いたところ、実父の祖父名義の土地があり、実父の弟さんが相続するため、遺産分割協議に協力してほしいというのです。電話をくださった方から〈書類を送るからすぐ確認して!〉といわれまして、先日受け取ったのですが、びっくりするような内容でして…」
わずか3坪の土地に、相続人が25名も!?
これまで一度も会ったことがない、叔父という人からの手紙によると、実父の祖父の土地は、渋谷区の高級住宅街にある、わずか3坪ほどのものだとのこと。ところが、同封されている家系図をみたところ、子ども、孫、ひ孫を合わせて相続人は25人もいるのです。
田中さんに電話をかけてきたのは、該当の土地の相続を希望している、実父の弟にあたる叔父本人でした。
「電話では、挨拶もそこそこに用件だけまくし立てられ、正直、気分が悪かったです。それに、私にとって父親といえば、かわいがって育ててくれたいまの父だけですし、実の叔父といっても他人と同じです。さっさと相続放棄して関係を切りたいのですが…」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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