離婚して子連れで実家に戻った女性は、会社員として働きながら、両親を介護し、看取りました。しかし、父親が遺した遺言できょうだいといさかいが起こり、絶縁状態に。そして今度、母親が遺した遺言を巡り、再びきょうだいとのいさかいが起こる可能性があって…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、について解説します。
離婚・子連れで実家へ戻った二女…両親を介護し、看取る
今回の相談者は、50代の会社員の佐藤さんです。高齢の母親の相続に伴い不安があるとのことで、筆者のもとを訪れました。
佐藤さんは30代で離婚。2人の子どもを連れて実家に戻り、ずっと両親と同居してきました。
佐藤さんには姉と弟がいますが、2人とも結婚したタイミングで実家を離れ、実家から離れた場所に自宅を購入して暮らしています。
佐藤さんの父親にはもともと持病があり、年齢を重ねてからは介護が必要でした。両親の面倒は、実家に戻った佐藤さんが見ることが暗黙の了解となっており、佐藤さんもそれを受け入れていました。
「私は2回ほど転職をしましたが、ずっと正社員として働いてきており、無職だった期間はありません。ですから、両親に経済的に依存したことはありません」
しかし、姉と弟はそうは見ていなかった模様です。
「親の老後資金を奪い取るなんて許せない」母親が激怒
佐藤さんの父親は10年前に亡くなりましたが、下記の内容の遺言書を準備していました。
●自宅は母親と二女(佐藤さん)で1/2ずつ相続すること
●預金は母親に1/2、残り1/2を子どもたち3人で等分にして相続すること
自宅の土地は8,000万円、建物は500万円で、これを母親と佐藤さんが1/2ずつの割合で相続しました。預金は3,000万円で、母親が1,500万円、子どもたちがそれぞれ500万円ずつ相続することになりました。
「ところが、姉と弟は〈自分たちの相続分が少なすぎる〉〈実家に甘えている二女が多くもらえるのはおかしい〉といって、母と私に遺留分を請求してきました。家庭裁判所による資産の調査と評価に3年かかり、姉と弟は最終的に1,000万円近い遺留分を受け取ることになったのですが…」
佐藤さんの母親は「母親の老後の生活資金のみならず、親の介護をひとりで引き受けたきょうだいの生活資金まで奪い取ろうなんて許せない」と姉と弟に激怒。その後は絶縁状態となって現在に至ります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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