司法書士が顔を曇らせたワケ
打ち合わせに同席していた提携先の司法書士は、田中さんの話を聞くと顔を曇らせ、「それは相当しんどくなりますよ…」といって、ペンを片手に説明をはじめました。
①相続放棄するには、亡父の戸籍を全部集め、家庭裁判所に申述する。しかし、亡父の戸籍を集めるにも時間と費用がかかり、家庭裁判所への書類の提出にも手間がかかる。
②自分で手続きすれば費用は抑えられるが、司法書士や弁護士に手続きを依頼すると、それなりに費用がかかる。
このような相続に巻き込まれては、まさに地獄のような状況になりかねません。
そこで司法書士がアドバイスしたのは「相続分の譲渡」でした。自分の相続の権利を特定の相続人に譲渡すれば、相続するものはなく、実質的に相続放棄と同じ結果になります。それなら「譲渡証書」に実印を押印し、印鑑証明書と戸籍謄本を添付することで手続きが完了します。
田中さんは「それはいいですね!」といったあと、少し考えこんでしまいました。
「ですが、それは印鑑証明や戸籍謄本を、例の叔父に託すってことになりますよね。正直、抵抗がありますね…。弟とも相談してみます」
打ち合わせはとりあえず終了しました。
叔父が依頼している司法書士を窓口にして手続き完了
後日、田中さんから電話が入りました。田中さんの弟が叔父に電話で確認をしたところ、諸々の手続きは司法書士に頼んでいるとのことでした。
登記の専門家である司法書士に送付すれば、よく知らない親族の目に重要な書類が触れることもないので安心です。そのため、まずは司法書士の連絡先教えてもらい、必要書類を送付するようにアドバイスしました。
その後、田中さんと弟は、先方の依頼先の司法書士と連絡を取り、相続分の譲渡の手続きを終えることができました。
「今回の件、突然のことで本当に驚きましたが、アドバイスをもらって大変助かりました」
報告の電話をくれた田中さんはほっとした様子でした。
今回、相続登記を4代さかのぼったことで相続人が25人も見つかったわけですが、令和6年4月1日以降、相続登記の申請が義務化され、相続後3年以内に相続登記をすることが義務付けられています。それに伴いってこのようなケースは減っていくでしょう。
「財産を受け取らない=相続放棄」と認識している方は多いのですが、今回のように相続人が多い場合は、相続の権利譲渡が有効です。
また、これらの手続きにあたり、印鑑証明書や戸籍謄本といった重要な書類が必要ですが、親族とはいえ、これらの個人情報を渡すことに抵抗があるケースもあるでしょう。ですが、司法書士等の専門家が手続きをしているなら、個人情報の扱いへの懸念はなくなり、安心だといえます。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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