経費にならない「スーツ代」も特定支出にできる
6.勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)
黒「勤務必要経費も、資格取得費と同様に平成24年度の税制改正で加わったものです。図書費、衣服費、交際費の3つがあり、あわせて65万円が上限になっています。
まず1つ目の図書費ですが、職務と関連する書籍や新聞、雑誌などが対象です」
――電子書籍は図書費の対象になりますか?
黒「はい。電子書籍を購入した場合も図書費用と認められます。ただし、キンドルやタブレットといった電子書籍の閲覧用端末の購入費用は対象外です。
2つ目の衣服費は、勤務場所で着用するスーツや制服、作業服などが対象です」
――オーダースーツとなると高級になりますし、スーツは会社の経費にならないので、個人で特定支出にできるというのは大きなメリットですね。
黒「3つ目の交際費は、得意先・仕入先などの接待や贈答が対象です」
――勤務必要経費って、結構幅広く使えそうですね! これってたとえば、テレワーク環境を整えるために机を買いたいときは、特定支出にできるのでしょうか?
黒「テレワーク環境を整えるためのコンピューターや机、イスなどの費用は、残念ながら特定支出の対象外となっています。そのため、特定支出ではなく会社で経費申請できないか、事前に確認してみるといいと思います」
申請時は、「会社からの証明」が必要
――では、申請方法を教えていただけますか?
黒「特定支出控除を利用するためには、特定支出を証明する明細書や領収書、会社に発行してもらった証明書や源泉徴収票などをそろえて、確定申告する必要があります」
――会社に証明してもらう書類もあるんですか。
黒「そうなんです。特定支出控除を使っている人は少なく、会社も慣れていないため、手続きに時間がかかる可能性もあります。
[図表3]が実際の依頼書ですが、転居費、研修費……と費用の項目ごとに書類が必要ですので、手間はかかります」
――サラリーマンにとっては慣れない確定申告もしないといけないですし、少し大変ですね。
黒「基本的に、会社はあまりこの制度について詳しくない可能性が高いです。
まずは自身で調べたあと、会社になにを書いてもらう必要があるのか、また会社に書いてもらうにあたって根拠資料(請求書、領収書など)を揃えておく必要があります」
――個人で調べないといけないというのは、たしかに少し負担が大きいかもしれませんね。
黒「さらに。使ったお金が戻ってくるわけではありません。あくまでも特定支出控除として申告した結果、すでにとられている所得税が還付されるというしくみです。
書類手続きが手間なわりに、それほど節税効果があるわけではないというのが、この制度がいまいち浸透していない理由かと思います。
ただ、該当しているのに使わないというのはもったいないので、活用も検討してみてはいかがでしょうか」
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黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
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