〈結婚に縁なし〉の40代兄妹、母と一緒に家を買うことになったが…まさかの兄の結婚&新婦の同居で、妹「居場所がない」「家を買ったお金を返してほしい」

〈結婚に縁なし〉の40代兄妹、母と一緒に家を買うことになったが…まさかの兄の結婚&新婦の同居で、妹「居場所がない」「家を買ったお金を返してほしい」
(※写真はイメージです/PIXTA)

40代独身女性とその兄は、父が亡くなったのをきっかけに、母から新居への住み替えを提案され、了承。平穏な生活が続きますが、突然兄が結婚・家族と同居することになり、女性は居場所を失います。家を出るため、自宅の購入資金を返してほしいと考えますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

不動産の共有、3つの解消方法

不動産の共有を解消する方法としてあげられるのは、

 

①一緒に売る

②共有者が買い取る

③持ち分だけ第三者に売却する

 

という方法です。共有者に贈与する、遺贈するという方法もありますが、それではなにも残らないため、今回のケースでは選択肢になりません。

 

この3つの方法のうち、最も合理的なのは「①一緒に売る」という方法です。親族ではない第三者に売却し、売れた価格を持ち分で按分するため、各自の権利分がお金として入ります。売却価格は時価となり、合理的で公平な共有解消だといえます。

 

しかし、不動産がなくなる、住む家がなくなるということが最大のネックにもなります。

 

不動産を売りたくないという事情があるなら、次の選択肢となるのは「②共有者が買い取る」という方法です。このときの買い取り価格の算定が難しいところですが、一般的には「流通している時価=税務署に否認されない価格」となります。親族だからといって、時価より大幅に安い金額で売買すると、差額が贈与の対象となるのです。

 

仮に、時価の8割といわれている相続評価で売買すると、鈴木さんの場合は1,000万円が買取価格の基準となります。

 

しかし親族間の場合、双方の心の片隅に「家族なのだから」という気持ちが残ることで、なかなか話がまとまりません。

 

「③持ち分だけ第三者に売却する」という方法ですが、所有者が「親族が買わないなら、買ってくれる第三者に売却する!」という心情になれば、最終的にこの選択に踏み切ることになります。近年では、共有持ち分が解消できなくて困っているという人も増えており、それを買い取る専門会社も出てきました。最悪はこの選択も致し方ないかもしれません。

 

しかし、ほかの共有者からみれば「他人が一部を所有する」というイレギュラーな状態になるほか、これまで請求されなかった家賃も請求され、場合によってはほかの持ち分の買い取りを迫られるなど、家族間での所有にはなかった強い緊張が生じることになります。

 

とりあえず「もう一度家族間で話し合う機会を作る」ということで、仕切り直してみることになりました。話し合いはこれからですが、鈴木さんにとっていい着地となるよう、サポートしたいと思います。

 

当初はベストな判断だと思えた不動産の共有も、時間の経過とともに個人の状況が変われば、気持ちのすれ違い→緊張→いさかい→断絶…と進み、結果、修復不可能な亀裂が入ることにもなりかねません。

 

できる限り「不動産の共有」というかたちは取らないのが基本であり、それでもなお共有が必要になるなら、共有を解消する出口までも決めておくことが必須となるのです。


※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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