(※写真はイメージです/PIXTA)

大事にとっておきたい退職金。できることなら、長生きリスクが待ち受ける老後の後半戦まで温存しておきたいという人も多いでしょう。しかし、予期せぬ事態により、あっという間に使い果たしてしまうことも……。本記事では、田辺さん(仮名)の事例とともに、子が親の老後におよぼす影響についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

可愛い一人娘「少しのあいだ住まわせて」

「老後は慎ましくのんびり暮らそう……」

 

田辺祐一さん(仮名/73歳)は妻と2人、穏やかな老後を送っていました。しかし、数年ぶりに帰ってきた一人娘の紗香さん(仮名/40歳)の「少しのあいだ住まわせて」というひと言によって、状況は一変します。

 

離婚した紗香さんは、実家に帰ってくることになったのです。もともと義母との折り合いが悪いことで夫とは度々揉めていましたが、1年ほど前から言い争いが絶えなくなり、とうとう離婚に至りました。2歳になる息子もいましたが、パート勤務で経済力がないことを理由に元夫が引き取ることに。

 

自分の経済力のなさによって愛する息子と離れ離れになった無力感からか、紗香さんはSNSの女性の起業を支援をするアカウントの発信にのめり込みました。同じように起業する女性たちの姿をみて、次第に自身も起業をと考えるようになります。


紗香さんには自身の離婚の経験から、同じように悩んでいる女性のカウンセラーを仕事にしていきたいという熱い思いがあります。成功するためには、SNSを通じて紹介された起業のコンサルティングを受ける必要があるそうですが、自分のパートの収入だけではその授業料に到底手が届きません。そこで、「毎月30万円の起業コンサルを受けたいので、お金を貸してください」と父親である田辺さんに頼みこみます。

 

田辺さんは、紗香さんからの頼みを聴いて、初めは「そんなことに大金を払っても上手くいくはずはない」と断っていました。しかし何度もめげずに頭を下げる娘の姿に、「子供と離れて無気力になっていた娘が、そんなに熱意を持ってやりたいというのなら……」と次第に気持ちが動きます。

 

最終的に「1年分くらいなら……」と、老後の資金として手を付けず、大切に残しておいた退職金の2,000万円から無理をして支払うことに。

 

普段から贅沢をしてこなかったため、これまでは年金収入だけで暮らすことができていました。しかし、夫婦合わせて公的年金額が月20万円程度の田辺さんたちにとっては、もし今後、介護状態などになった場合への備えも含めて、本当は残しておきたいと思っていたお金です。

 

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