兄貴、5,000万円払ってくれ…フツーの専業主婦だった母の死から一転、円満なきょうだいが大金を巡って大バトルを繰り広げたワケ【弁護士が解説】

兄貴、5,000万円払ってくれ…フツーの専業主婦だった母の死から一転、円満なきょうだいが大金を巡って大バトルを繰り広げたワケ【弁護士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

相続トラブルと聞くと、確執のあるきょうだい関係を想像する方が多いかもしれませんが、必ずしもそうではなく、相続発生以前はごく普通の関係だったというケースは珍しくありません。ここでは、普通の人でも直面するかもしれない「揉めやすい相続事例」を取り上げ、具体的な解決方法を探ります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

自宅を低く評価してほしい兄、高く評価してほしい弟

上記のケースでは、お金を受け取る弟は、少しでも不動産価格を高く評価したいですし、代償金を渡さなければいけない兄は、少しでも安く評価したいため、評価の方法でも揉めることが想定されます。このように、相続人としての「立場の違い」が、トラブルを生み出すことになります。

 

ではなぜ、揉めることがわかっているのに「同じパターンのトラブル」が起こり続け、国や法律が手を差し伸べてくれないのかでしょうか?

 

これは「不動産の評価方法が定まっていない」ことに尽きるといえます。

 

固定資産税を算出するために不動産を評価する場合は「固定資産税評価額」、相続税を算出するために不動産を評価する場合は「路線価」という、国が決める算定基準があります。一方で、裁判所で相続トラブルを扱う場合の不動産評価基準は「実勢価格」、いわゆる市場価格や時価となっています。

 

裁判所での手続きを進める際に、その不動産が実際にどれほどの価値を持つのかを考えることになりますが、実勢価格には一義的な算定法がなく、市場の動向によって価格が変動することもあります。それがトラブルの原因になるのです。

 

例えば、「裁判所の基準は〈路線価×〇割〉」などと、算定式や算定方法を一義的に決めてしまえば、トラブル自体が起こらなくなるのではないかと思うのですが、残念ながらそのようにはなっていません。

 

ひとつの算出基準として「路線価を0.8で割れば実勢価格に近くなる」「固定資産税評価額を0.7で割れば実勢価格に近くなる」といった話もありますが、時価というものは、そのときによって本当に異なります。

 

固定資産税評価額のほうが高く、買い手がつかない土地もありますし、地域性なども千差万別です。時によって値段の付くエリアも変化し、実際に居住している状態や、再建築ができない土地の場合なら、形状や利用用途によっても変わってきます。結局のところ、算出された実勢価格に折り合わない場合は「不動産鑑定士」に鑑定してもらうほかありません。

 

不動産鑑定士というのは国家資格で、鑑定士がさまざまな不動産鑑定の決まりに基づいて評価を行いますが、やはりここでも「人によって評価が違う」ことになります。

 

このように、どの不動産評価の評価基準を採用しても、一義的ではないのです。

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