デジタルによって拡大しつづける「買い物格差」
和田:私も同感です。デジタルの壁は高齢者の生活の質を分ける大きな問題だと思います。
というのも、私自身が『80歳の壁』を出したとき、それを痛感したからです。
一つ前の『70歳が老化の分かれ道』では、「マスコミが騒いでいるほど高齢者による自動車事故は多くない。だから、免許は返納するな。返したら外出する機会がなくなり要介護一直線だ」と書いたら、それがすごく受けた。
高齢者の場合、特に地方では郊外型の書店に自家用車で行って本を買う場合が多く、その人たちにとって免許の返納は自分の足が奪われる死活問題だから、共感を得られたわけです。50冊買って友達に配ったというエピソードも聞いています。
ところが、『80歳の壁』では、違った現実を目の当たりにします。この本も同じように郊外型書店で売れると思ったら、初期の段階で直面したのは予想外の現象でした。
Amazonで飛ぶように売れたのです。それは、私にとっては一番の驚きであると同時に、いよいよ後期高齢者もEC(電子商取引)を使い始めたことを実感させられる出来事だったのです。
原田:今回の調査では、高齢者全体のAmazonの利用率は約3割、楽天市場は約2割でした。
しかし、PCやスマホの所有者だとその割合が一気に増え、PCを持っている人ではAmazon利用率は約7割と跳ね上がります。デジタル高齢者かどうかで、買い物格差が露骨に出ているといえます。
原田 曜平
マーケティングアナリスト/芝浦工業大学デザイン工学部教授