「デジタルの壁」が老後の幸福度を左右するといえる理由
原田:和田さんの2022年出版の著書『80歳の壁』も、80歳直前でそれを意識せざるを得ない団塊の世代に、よく売れたのではないでしょうか。
和田:その通りです。私はこれまで何冊も高齢者向けの本を書いてきています。古くは1996年に出版した『老人を殺すな!』(現・KKロングセラーズ)という本で、私が浴風会という高齢者専門の総合病院に在籍し、そこで判明したことを記しました。
血圧、血糖値が高めの人のほうが元気であるなどの事実で、高齢者と若者の医療は違うはずだと訴えました。けれども、ほとんど反響はありませんでした。
しかし、風向きが変わってきたのが近年です。2021年、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)という本を出すと、これが40万部以上のヒットを記録したのです。それに続いたのが、『80歳の壁』の大ヒットです。私に言わせれば、「機は熟した」ということ。
つまり、高学歴で知的で本もよく読む団塊の世代が後期高齢者になり、ようやく読者対象になったことが大きいと思っています。
そんな80歳の壁を前にした団塊の世代やそれ以降の世代も含めて高齢者全体が相当知的になっており、今と15年前の高齢者とでは、だいぶ事情が違ってきているというのが私の実感です。
原田:私たちが行った今回の調査ではいくつか大きな発見があったのですが、そのうちの一つが、和田さんが提唱する〝80歳の壁〞が確かに存在したことです。
80歳を超えると、PCやスマホなどデジタルが使える率ががくんと下がります。その他にも色々な指標が一気にマイナスになるのが80代でした。
一方で、例外もありました。それが、80歳になろうが、デジタルを使いこなせている人は、健康であり、可処分所得も高いなど、色々なプラスの指標が正の相関を示していたことです。
すなわち、年齢にかかわらず、デジタル高齢者はハッピーであり、〝デジタルの壁〞こそが、健康や可処分所得、満足度、幸せか否かを隔てる重要なファクターである、と分かったことが、この本で伝えたい一番の発見だと考えています。