父の死後、争いはピークに……
結局、公正証書遺言は考え直したり書き換えたりする余裕もなく、飯塚さんは亡くなった。
飯塚さんが亡くなるまでに兄弟の仲はさらに険悪になり、お互いに話をすることなく、もう後戻りできない状態になっていた。飯塚さんの葬儀では長男が喪主となったが、お互いに目を合わせることもなく、険悪な雰囲気だった。
それからしばらくして、次男に裁判所から調停の連絡があった。長男が申し立てしたものだった。双方弁護士に相談して、調停で解決することになった。
次男は「マンションは立地条件がいい高級マンションだから、もっと高いものと考えるべき」と主張。長男は、「たとえ少しぐらいマンションが高かったとしても、母の世話も父の最期までみていたのも自分なんだから、本当はもっともらってもいい。小さいことを言わず父の思いを汲んで欲しい」と反論。
双方、子どもたちが高校生、大学生となりお金がかかる時期になっていることもあり、早く決着をつけたい気持ちは同じだが、マンション価格が引っかかりなかなか話し合いは終わらない。
相続財産は全て“塩漬け状態”。費用だけがかさんでいく事態に
マンションは売ることもできず、固定資産税に加えて毎月の管理費、修繕費などがかさんでいく。長男は、マンションに引っ越して住み出すと、次男が何を言ってくるかわからないためそのまま放置している。
遺産分割協議書も作れないため、父の口座は凍結され、マンションも売れず、遺産は塩漬けになっている。 兄弟は子どもの頃から仲良しだったのに、争いになってしまい、飯塚さんの死から5年経っても解決の見通しが立たない。
どうすれば争いは起きなかったのか
遺言は自分の思いだけでなく、子どもたちの思いや生活状況、財産の状況などを総合的に考えて、事前に関係者が納得していないと深刻な事態になる。
また、遺産分割協議の段階で険悪になってから鑑定評価を依頼されることがあるが、そうなってから一方の依頼で鑑定評価をしても、相手から重箱の隅をつつくような反論が出てくる事が多い。
「この不動産鑑定士に依頼して、出てきた結果には文句を言わない」と事前に決めておかないと、結局無駄になることが多い。相手の用意してきた不動産鑑定士だと、相手の言いなりだろうと勘ぐられ、今度はこちらも鑑定評価を取って……と、時間と費用だけがかさんでいく。
不動産の鑑定評価を事前にしておくことはもちろんのこと、鑑定評価は、遺言や遺産分割に精通した信頼できる不動産鑑定士に依頼することが重要である。
竹田 達矢
不動産鑑定士
行政書士
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