「全員参加」「ボトムアップこそ大事」は本当? 企業の将来像を示す「ビジョン」を社員に作らせようとするとうまくいかないワケ【起業家が解説】

「全員参加」「ボトムアップこそ大事」は本当? 企業の将来像を示す「ビジョン」を社員に作らせようとするとうまくいかないワケ【起業家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

全社員が同じ方向を向き、会社を持続的に成長させていくために欠かせない「ビジョン」。そんなビジョンも、ただ掲げているだけでは意味がありません。ビジョン策定の方法には様々なものがありますが、その多くは“機能しない”ビジョンを生み出しているのが実情です。そこで本記事では、世界で25万社以上が活用する起業家のための経営システム「EOS(the Entrepreneurial Operating System)」の専門家である久能克也氏が、ビジョン策定の問題点と具体的な方法について解説します。

機能するビジョン策定に不可欠な「8つの質問」とは

私たちは、ビジョン策定と共有のためのツールとして「8つの質問」を用意しています。具体的には次のような内容です。

 

  1. コア・バリュー:我々は誰か?
  2. コア・フォーカス:我々の戦場はどこか?
  3. 10年目標:我々はどこへ向かっているのか?
  4. マーケティング戦略:どうやってそこへ行くのか?
  5. 3年イメージ:3年後の組織の姿は?
  6. 1年計画:1年後はどこまで進んでいるのか?
  7. 石:この90日間は何を最優先に達成するのか?
  8. 課題リスト:障害、課題は何か?

 

これらの質問に対する回答を「ビジョン・トラクションシート」に記入することで各項目が明確になり、かつ視覚化されることで共有も容易になります。

 

[図表1]ビジョン・トラクションシート(ビジョンページ)

 

[図表2]ビジョン・トラクションシート(トラクションページ)

 

ただし、8つの質問の答えは経営チーム全員が合意しておく必要があります。トップダウンにありがちな独りよがりにならないように注意することが大切です。

 

経営チームの全員が合意し、組織全体がそれを共有することで「全社員が同じ方向に向かってオールを漕ぐ」状態をつくれます。つまり、速くかつ力強く進む“船”としての組織を生み出すことができるのです。ここにビジョンをつくる本当の意味があります。

 

見ていただくとわかるように、ビジョン・トラクションシートは「ビジョンページ」と「トラクションページ」に分けられています。つまり、1〜5番までで会社の方針を明確にし、そこからさらに具体的な行動へと落とし込んでいるのです。

本当に“機能する”ビジョンを手に入れた企業の事例

では、なぜこうした仕組みを用意する必要があるのでしょうか。その理由は「継続の難しさ」にあります。

 

事実、どんなビジネスでも大きなピンチ(困難)が訪れるときがあります。その際に、会社の方針を安易に変えてしまうのではなく、自分たちが本当にやるべきことに踏みとどまって前に進んでいくためには、確かなビジョンが欠かせません。

 

そこで「8つの質問」や「ビジョン・トラクションシート」によってどの会社でもきちんと機能するビジョンを策定・共有できる仕組みを提供しているのです。

 

それによってどのような変化が生み出されるのでしょうか。ビジョンに関連した成功事例を見てみましょう。

 

あるシステム開発会社の事例です。同社は、創業してからずっと右肩上がりで業績が伸びていたのですが、策定していたのは売上目標だけでした。しかし社員が20人、30人と増えてくると、社長は全体をまとめるのが難しいと感じられるようになったそうです。

 

そこでビジョンについて考えはじめたとき、私と出会いました。同社では、本稿で紹介した内容を踏まえて、ビジョン作りに取り組むことになります。その結果、次のような変化が見られました。

 

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