「ナンバー2」は育てようとして育てられるものではない
社長が「だいぶ会社が成長してきた。そしてこれからも成長させたい」と考えるとき、社長が経営に集中できるよう、社長をサポートしてくれる「ナンバー2」をいかに育成、または採用するかが重要になります。
有能な「ナンバー2」に恵まれた社長が会社を大きく成長させていることは、実際の事例をみれば明白です。ホンダの創業者である本田宗一郎氏には藤沢武夫氏がいました。ウォルト・ディズニーも、兄のロイ・O・ディズニーがいたから成功したといわれています。
しかし、よいナンバー2に恵まれるのは容易なことではありません。筆者に寄せられる相談のなかでも多いのが「ナンバー2が育たない」「採用も難しい」というものです。
そもそも、経営の中枢となるポジションは、そう簡単に育成や採用ができるものではありませんが、育成が困難な理由はそれだけではありません。
「ナンバー2」というと「社長の分身」「ミニ社長」「いずれ現社長のようになる人」をイメージしてしまいがちです。しかし、そう考えてしまった時点で、ナンバー2になる人材の育成や採用はうまくいきません。そもそもの考え方が間違っているからです。
「ナンバー2」の育成に成功したA社の事例
「久能さん、ナンバー2が誕生したよ!」
つい先日、筆者のクライアントであるA社の社長から嬉しい報告をもらいました。
A社は小売店舗を複数展開する、100名規模の企業です。私がA社の経営会議に参加するようになってから約2年半。経営チームメンバーの1人だったIさんが晴れてナンバー2のポジションに就任したのです。
Iさんはもともと人事の責任者でしたが、半年ほど前に「ナンバー2になる!」と決心し、社長にも伝えていたそうです。そこから社長は、Iさんに新しいポジションに相応しい能力と心構えを身につけてもらうための集中トレーニングを施しました。そして、成長ぶりを確認してから満を持して経営会議で発表しました。異論反論は出ず満場一致だったそうです。Iさんの成長を経営チームメンバーも見て納得したのでしょう。
Iさんがスムーズにナンバー2に就任できたのは、Iさん自身の能力や努力ももちろんありますが、それまでの過程に注目する必要があります。
タネ明かしをすれば、実は、A社は「ナンバー2を育てようとしなかった」ことがかえってIさんの成長を促し、結果として彼をナンバー2として育成することに成功したのです。
一緒に「組織づくり」「ルールづくり」「カルチャーづくり」をした
Iさんは2年半前にA社の「経営チーム」のメンバーに加入し、経営の仕組み作りのプロジェクトを推進してきました。
経営チームは、社長を中心に、組織のあり方や経営戦略を考え、共有すべき基本理念(ビジョン、ミッション、コアバリュー)を策定し、それらを実現するためのプロセスを整えるチームです。
Iさんはもともと人事担当だったこともあり、特に、コアバリュー(共有すべき価値観)の浸透に力を入れていたのが印象的でした。当初は、コアバリューを体現している人(EOSの用語では「正しい人」といいます)が20%ほどしかいなかったのが、Iさんと経営チームの努力により現在では70~80%が「正しい人」になりました。
結果として、A社のカルチャーが安定し、マネジメントが劇的にラクになったそうです。
Iさんはこれら経営全体のしくみづくりを、経営チームの一員として、当事者として推進していたので、ほぼ出来上がった仕組みを運営することにはスムーズに慣れることができました。
そして、実はこれが、A社の組織内でのハレーションが起きることなくナンバー2が誕生した要因です。
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