「全員参加」「ボトムアップこそ大事」は本当? 企業の将来像を示す「ビジョン」を社員に作らせようとするとうまくいかないワケ【起業家が解説】

「全員参加」「ボトムアップこそ大事」は本当? 企業の将来像を示す「ビジョン」を社員に作らせようとするとうまくいかないワケ【起業家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

全社員が同じ方向を向き、会社を持続的に成長させていくために欠かせない「ビジョン」。そんなビジョンも、ただ掲げているだけでは意味がありません。ビジョン策定の方法には様々なものがありますが、その多くは“機能しない”ビジョンを生み出しているのが実情です。そこで本記事では、世界で25万社以上が活用する起業家のための経営システム「EOS(the Entrepreneurial Operating System)」の専門家である久能克也氏が、ビジョン策定の問題点と具体的な方法について解説します。

ビジョンを正確な言葉で定義する

ビジョンは機能してこそ意味があります。機能するとはつまり、掲げているビジョンが社内に浸透していることに加え、長期・中期・短期の視点から業務に影響を与え、望ましい成果を生み出し続けているということです。

 

ビジョンが機能する状態をつくるには、その前提として、ビジョンの捉え方を明確にしておく必要があります。ビジョンをどのように捉えるのかによって、それが機能しているかどうかの判断もまた変わってくるためです。

 

たとえばビジョンを「(事業を通じて)どのような世界を作るのか?」という意味合いで使っているケースもあると思います。それもまた一つの考え方です。

 

しかし私たちは、用語の問題に過ぎないかも知れませんが、そのような考えを「コア・フォーカス(目的・使命・パッション)」という言葉でくくり、それらはあくまでも“ビジョンの一部”として捉えています。つまりビジョンを構成する一要素であるという発想です。

 

そのうえでビジョンとは何か。その組織が「どこへ向かっていて」「どうやってそこに到達するのか」を明確に描くこと。そしてそのビジョンが機能するためには、全員が100%同じ“1枚の絵”を共有することが必要です。

 

重要なのは、経営者や経営チームメンバーが本当にそこまで行きたいと思っていることです。目的地まで引っ張っていくのは経営者の仕事なので、まず社長がそのビジョンをきちんと腹落ちしていること。そのうえで経営チームメンバーも同様に自分事として捉えていることが重要です。

 

そうでなければ、いわゆる「新年の目標」のように、気付いたころには忘れてしまいます。繰り返しになりますが、ビジョンは社長と幹部、さらには全社員が自分事として捉え、持続的に行動へと落とし込まれなければ意味がないのです。

 

そこで重要なのが「ウォンツ」ベースの発想です。自分たちの内側から湧いてくるウォンツをもとに、経営チームが主導してビジョンを策定していくこと。一定の権限と責任があるメンバーとともに、社長を含めて策定すると機能するビジョンができあがります。

 

そしてその方法は、曖昧なものであってはいけません。方法論が明確であり、かつ確立されていてこそ再現性があります。加えてその方法論は、ビジョンの性質上、策定と共有を同時に実現できるものが望ましいといえます。

 

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