(※写真はイメージです/PIXTA)

株式投資を始めたいと思ったら、どの銘柄に投資すればいいのでしょうか? 足立公認会計士事務所代表の足立武志氏は、著書『お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書』の中で「銘柄選びはシンプルでよい」と主張しています。一体それはどうしてでしょうか? 理由を本書から紹介します。

「割安株投資」VS.「成長株投資」徹底分析(1)

株式投資をする際、当然ながらどの銘柄に投資するかを選ばなければなりません。その際の選定方法として、大きく分けると2つのスタイルがあります。それが「割安株投資」と「成長株投資」です。


割安株投資とは「バリュー投資」ともいわれ、企業価値と株価とを比較して、株価が企業価値よりも割安と判断される銘柄に投資するスタイルです。株価が割安な時に買い、企業価値が正当に評価されて株価が上昇するのをじっと待つ、というイメージです。


一方の成長株投資とは「グロース投資」ともいわれ、企業業績が年々成長を続けているような銘柄へ投資するスタイルです。企業の成長に伴う株価の上昇の恩恵を受けようというものです。

割安株投資の着目点はどこにあるのか

割安株投資で重要なのが、企業の価値と株価との比較です。企業の価値は、フロー(損益計算書)の面とストック(貸借対照表)の面とで測ることができます。フロー面における1株当たりの企業価値は「1株当たり当期純利益」、ストック面における1株当たりの企業価値は「1株当たり純資産」です。


フロー面で企業価値に比べた株価の割安度を測る指標がPER(株価収益率)です。これは、株価が予想1株当たり当期純利益の何倍かを表したもので、一般的にこの数値が低いほど、株価は割安とされます。

 

ストック面で企業価値と比較した株価の割安度を測るための指標がPBR(株価純資産倍率)です。これは、株価が1株当たり純資産の何倍かを表したもので、PBRが1倍を割り込んで低くなるほど株価が割安とされます。


これ以外に、配当利回りにより、株価の割安度を測ることもあります。配当利回りは「当期予想1株当たり配当金÷株価×100(%)」で求められます。この数値が高いほど株価が割安であるとされます。

成長株投資の着目点は?

一方の成長株投資で重要なのは、企業の「成長」です。成長度合いを見るための重要なポイントが「売上」と「利益」です。売上と利益が増加すればするほど、高成長であると判断されます。理想は、売上高と営業利益、経常利益、当期純利益の全てが毎年増加を続けていて、来期以降も増加予想となっている銘柄です。


アベノミクス相場で株価が5倍、10倍になっている銘柄が続出していますが、その多くが毎年増収増益を達成している成長株です。なお、時折見受けられるのが、売上高は横ばいであるものの、利益は毎年増加を続けているというケースです。しかし、こうした銘柄は成長株投資の際はできるだけ避けるべきです。


売上高は利益の源泉です。売上高が増えないのに利益だけ増やすことにはどうしても限界があります。売上高が増えなければ近い将来利益も頭打ちになってしまうはずです。そうなれば株価も大きく下落してしまうでしょう。成長株投資であれば、売上高・利益とも増加している「増収増益」の銘柄を選択するのが基本です。

ハイリスク・ハイリターンなのはどちら?

割安株投資と成長株投資を比べると、割安株投資の方が成長株投資よりもリスクは小さいですがリターンも小さいという傾向にあります。これは、株価は長期的にはおおむね企業の業績に連動するため、業績が毎年伸び続けている成長株の方が、株価が大きく上昇することを期待できるからです。


半面、ひとたび成長が鈍化すると株価が大きく下落するため、天井付近で投資した場合、適切な損切りなどを行わないと大きな損失を被る可能性が高い点に注意が必要です。そのため、成長株投資は割安株投資よりもハイリスク・ハイリターンであるといえます。


一方、割安株投資は、すでに株価が企業価値より割安な状態のものを選んで投資しますから、そこからさらに株価が大きく下がるという可能性は小さくなります。その一方、増収増益が続くわけではないので、企業価値が正当に評価されなければ、いつまでたっても株価が上昇しないということも少なくありません。

時には「成長株かつ割安株」が見つかることも

割安株投資はPERやPBR、配当利回り、対する成長株投資は増収増益が続いているかどうか、というように、両者は着目するポイントが大きく違います。そのため、基本的には成長株投資目線と割安株投資目線とで、選択される銘柄は異なってきます。


ただ、成長株投資目線でも割安株投資目線でも同じ銘柄がピックアップされることが時々あります。つまり、「高成長」かつ「割安」な銘柄です。これは、マーケット自体が大きく売られている時や、長期的な下降トレンドにある時に起きる現象です。


例えば、毎年30%の増収増益にもかかわらずPER7倍という銘柄が放置されていたりします。増益率30%であれば、PERが30倍でもおかしくありません。もし、この時点で買って、3年後、PER30倍という正当な評価がなされれば、株価は約10 倍にまで上昇する計算です(増益率30%が3年続くと利益は約2.2倍に。その利益の30倍まで買われると、3年前にPER7倍の水準にとどまっていた株価は、「利益2.2倍×[30÷7]」で約9.4倍になります)。


現に、アベノミクス相場が始まる前はこのような銘柄がゴロゴロしていて、アベノミクス相場によってこうした銘柄の株価が正当に評価されるようになった結果、株価が5倍、10倍にまで上昇した銘柄が続出したのです。

 

このような、割安株かつ成長株は、ローリスクでハイリターンが見込めるお宝銘柄となり得ます。こうした銘柄を見つけたら、10%、20%の利益で満足することなく5倍、10倍を狙っていきたいものです。

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※本連載は、足立武志氏による著書『お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書』(扶桑社)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書

お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書

足立 武志

扶桑社

楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で人気連載を持つ著者が伝授。 投資でお金をしっかり増やせる人になるために、新NISAが始まったいまだからこそ読みたい株式投資の教科書。 2024年2月22日、日経平均株価がそれまで…

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