税務調査、年間売上1,200万円の50代・人気占い師のもとへ…調査官が「占いの相談内容」を執拗に尋ねる、怖い理由【税理士の実体験】

鄭 英哲
税務調査、年間売上1,200万円の50代・人気占い師のもとへ…調査官が「占いの相談内容」を執拗に尋ねる、怖い理由【税理士の実体験】
(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査ではさまざまな質問をされます。何気ない雑談のつもりで気軽に答えると、後々後悔するケースも……。本記事では、占い師のもとへやってきた税務調査の実例とともに、税務調査官による質問の真意について鄭英哲税理士が解説します。

代表者を立ち会わせない理由

筆者があえて代表者に帰ってもらっている理由は以下のとおりです。

 

・社長がいても、やることがないため
・税務署職員の世間話を遮るため

 

特に後者の「税務署職員の世間話を遮るため」が重要です。先ほどお話しした、30分程度のヒアリングは何気なく聞かれますが、普通に裏取りされています。聞かれる内容は大きくわけて以下8つの項目でしょう。

 

1.名前
2.生年月日
3.家族構成
4.出身地
5.出身学校
6.職歴
7.この会社を始めた理由
8.1~7にプラスした世間話

 

1~7は、事実についての質問ですので、ウソをついたり、取り繕ったりする必要はないでしょう。問題は、「8」です。

 

今回の占い師のケースでは、占いで人気のエリア、鑑定料の相場、お客さんの性別や年代、相談内容などをあの手この手で聞かれました。経営者である代表者から直接聞く業界や身の上話は、今後の税務調査を行ううえでちょっとした整合性を取られるわけです。

 

たとえば、池袋の占いの鑑定料の相場は1時間1万円といっていたのに、ここの鑑定料の単価は5,000円。おかしいな、といったようなイメージです。そのため、最初の30分では特に「8」の世間話を重点的にされます。

 

もし代表者が、社内にずっといて税務署職員が気になったことをずっと聞かれたらどうでしょう。会社にとって不利な証言をしてしまうこともあります。それにもかかわらず、代表者の多くは「税務署上等。聞きたいことがあるならなんでも教えてやる!」という心構えで、ペラペラ話してしまう人も実際多いものです。

 

そのため、最初の30分のヒアリングも、あまりに根掘り葉掘り聞いてくるようでしたら、筆者が「そろそろいい加減にしてください」と遮ったり、「社長、そろそろ出かける時間じゃないですか」と外出を暗に促すこともあります。とにかく、税務調査は代表者のちょっとした発言も帳簿との整合性を取ろうとしていると思ってください。

 

余談ですが、昔担当した税務調査の話です。ある女性が、日本にある「日本円」を韓国の銀行に送金し「ウォン」に替えました。その後、日本の銀行に送金し再び「日本円」に交換したところ、200万円以上の為替差益が発生しました。それにもかかわらず確定申告をしていなかったという案件でした。


こんな細かいことでも税務調査が入るのだと驚きましたが、税務調査最初のヒアリングはやはり行われました。
 

・韓国は何回行ったことがあるか

・現金はどれくらい持っていくのか

・韓国に行く理由

・直近で韓国に行ったのはいつだったか

・パスポートの出国記録を見せてはくれないか

 

など。為替差益がほかにもないかどうかを遠回しに聞き出したいのはわかりましたが、警察の取り調べみたいになってきたので、さすがに「もうそろそろいいでしょう」と遮ったことがありました。すると、「最後にもう1つだけいいですか」と古畑任三郎のようにしつこくなったので、強制的に終了させました。

 

 

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