「業界のトップ企業」を選ぶのが最も簡単で安全
個人投資家にとって最も簡単で安全な「高配当利回り銘柄」を選別する基準は、「業界のトップ企業」であることだ。
トップ企業といっても定義は様々だが、売上や利益で業界1位というごく普通の理解で大丈夫だ。業界のトップ企業であれば、ほとんど例外なくガバナンス(企業統治)が整備されている。
ガバナンスとは、企業価値の向上に向けて、組織における不正や不祥事を未然に防ぐための体制のことだ。ガバナンスのしっかりしている企業は、倒産のリスクだけでなく、減配や無配のリスクもかなりの確率で排除できる。万一、経営不振に陥っても立ち直りが早い。配当利回りランキングの順位が少し低くても、業界のトップ企業を選ぶことを推奨したい。
個人投資家は、機関投資家とは異なり、自由に投資できる資金が豊富にあるわけではない。投資できる銘柄の数にも限りがある。業界のトップ企業に投資対象を狭めたとしても、買うべき銘柄に困ることはない。
また、高配当利回りランキングの上位グループの予想配当利回りの差はゼロ・コンマ以下であり、序列が少し低い「業界のトップ企業」を選んだとしても実害はそれほどない。
個人投資家は、長期投資で10年以上もお付き合い願うのだから、できれば銀行や証券会社、メディアなど世間の監視が行き届いた「業界のトップ企業」を選ぶべきだ。
トップ企業なら、政府の関心も高いはずだ。公的年金の積立金の主要な運用対象になっているからだ。こうした衆人環視の強い企業ほど経営に対して強い規律が働く。
同じ業界にあっても、序列が低くなると、世間の監視が弱くなる。業績の悪化や不祥事の兆候が出ていても見逃されてしまう場合が多い。その結果、ある日突然、株価は急落、配当も減配になっていたということになりかねない。
もちろん大企業でも、急に経営が行き詰まり無配に転落するケースがある。2011年の東日本大震災で福島第一原発事故に見舞われた東京電力や、2015年の不正会計発覚、米国原発子会社の巨額損失など相次ぐ不祥事で、上場廃止に追い込まれた東芝などだ。
業界のトップ企業とはいえ、生身の人間が企業を経営している。判断ミスは避けて通ることはできない。だが業界のトップ企業でこうした事例が発生する確率は、業界の序列の低い企業に比べると圧倒的に低いはずだ。中小企業の経営不振はメディアが大きく取り上げないので、私たちが気づかないだけだ。
投資の対象として中小企業よりも大企業を選ぶべきだと勧めると「事大主義」だとか、「チャレンジ精神に欠ける」と批判されるかもしれない。だが、私たちは命の次に大切な老後資金を企業の経営者に預けるのであるから、きれいごとなど言っておれない。
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