持ち株に異変が迫ったときの見抜き方
私が考える高配当利回り銘柄投資のリスクについて説明しよう。それは、組み入れた銘柄の減配や無配の可能性が生じたときである。減配によってせっかくの高配当利回りが普通以下の利回りになってしまえば、老後の生活資金の補充がうまく進まなくなってしまう。
トヨタや三菱UFJ、三菱商事のような業界のトップ企業であれば、一時的な要因によって業績が悪化しても配当を据え置く場合が多い。しかし、構造的な収益悪化と判断すれば、減配や無配を決断する。そうした減配リスクを回避するためには、構造的な収益悪化を早期に察知して、別の銘柄へ乗り換えることが必要だ。
では、個人投資家は構造的悪化の兆候をどうしたらつかむことができるだろうか。その手がかりはある。業界のトップ企業には「炭鉱のカナリア」がたくさんいて、会社に危険が迫ると盛んに鳴き声を立ててくれる。その最たるものが『会社四季報』だ。
『会社四季報』の記者は企業の業績に異変が生じたときにカナリア顔負けに大きく〝騒ぎ立て〟てくれる。その業績予想や解説記事から、警戒信号をいくつか紹介しよう。
・連続増配の予想が突然取りやめになったとき
・「減額」「大幅減額」の表記が数号連続して登場するとき
・「今期は増益予想でも来期は減益予想」が続いたとき
特に気にするべきは「減額」の二文字
とくに重要なのは、「減額」の二文字だ。『会社四季報』の「減額」とは、記者が前号の業績予想数字を最新号で引き下げた場合に使われる言葉だ。新聞やテレビが選挙の開票が完全に終わらないうちに「当確」を打つのと同じように、『会社四季報』の記者は、独自の取材と判断に基づいて会社の正式発表の前に「減額」の文字を打つ。
その結果、連続して「減額」が登場するようになると、要注意だ。業績が下降トレンドに入ったことを示唆する。その結果、実際の「減配」も視野に入ってくる。このときは「減額」の要因が一時的か、それとも構造的かを、私たちは自分の頭で冷静に判断する必要がある。
金利上昇や原材料市況の下落による「減額」は、10年単位の長期投資においては一時的な要因ととらえるべきだ。これらは数年のサイクルで変動するものだからだ。10年間でならせば影響は平準化される。
ところが技術開発上の競争力の低下となると事態は深刻だ。構造的な競争力の低下に企業経営者がうまく対応できているかは、外部からなかなか窺い知れない。
そこで私が注目するのは、経営トップの在任期間の長さだ。在任期間が長ければ長いほど、表向きの業績数字と収益実態が乖離することがある。これは収益構造が劣化していることの反映だ。
「権力は腐敗する」という言葉がある。企業経営も同じだ。創業者でもないのに特定の人物が長くトップの座に君臨し続けている企業がある。社長の周囲はイエスマンで固められ、心ある社員のヤル気はそがれ、企業に活力がなくなる。技術のイノベーションも停滞する。
とくに〝大物〟といわれた社長や会長が退任した後は、急に業績がガタガタになり、連続増益や連続増配がストップする恐れがある。技術開発などの先行投資を怠ったツケが噴出してくるからだ。
業界のトップ企業で配当利回りが3~4%と高い企業でも、社長や会長の在任期間が業界平均を大幅に超えていれば、私は投資を見合わせることにしている。
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