フィリピン、南シナ海で高まる「中国との緊張」…マルコス政権の対応は?

6月10日週「最新・フィリピン」ニュース

フィリピン、南シナ海で高まる「中国との緊張」…マルコス政権の対応は?
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、中国との間で地政学リスクが高まるなか、マルコス政権がどのような対応を考えているのかとともに、フィリピンの2024年の経済成長見通しについて解説していきます。

フィリピン「第2四半期経済成長率」、予想を超える5.9%

フィリピンの大手投資会社(FMIC)とアジア太平洋大学(UA&P)は、合同で発表したレポート「ザ・マーケット・コール」の中で、政府支出の増加により4月~6月期(第2四半期)の経済成長率は5.9%と加速し、年間成長率は目標の6%に到達する可能性があると予測しています。

 

第2四半期のGDP成長率が5.9%に達した場合、前年同期の4.3%や、第1四半期の5.7%を上回るペースとなります。フィリピン統計局は8月8日に第2四半期のGDPデータを発表する予定です。

 

FMICとUA&Pが予想する年間成長率6%は、政府が掲げる6~7%の成長率目標の下限にあたります。レポートでは、第2四半期から始まる加速が2024年を通じて続くという楽観的な見方をしています。これは、雇用者数の増加、政府の財政余地拡大による支出の加速、特にインフラへの投資拡大、製造業の生産額の回復、エルニーニョ現象による農業の悪化からの改善などを根拠としています。

 

なお、政府は当初6.1%の平均成長率を想定していましたが、第1四半期の成長率が伸び悩んだことを受け、達成するためには残りの3四半期で平均6.1%の成長が必要になるとの見解を示しています。

 

また、フィリピン中央銀行(BSP)が第3四半期に25ベーシスポイントの利下げを実施した場合、内需が拡大すると予想しています。BSPは今月初め、政策金利を17年ぶりの高水準である6.5%に据え置きました(5回連続の据え置き)。しかし、8月までの利下げを示唆しています。7月にはインフレ率が中央銀行の目標レンジ(2~4%)の上限に達する可能性があるものの、米の価格と原油価格の下落により8月にはやや落ち着き、3%程度になると予想しています。

 

一方で、貿易赤字の拡大と米ドル高の影響で、7月から9月にかけてペソはさらなる下押し圧力にさらされる可能性があると指摘しています。ペソは6月5日に1ドル当たり58.42ペソで取引を終えました。これは、2022年11月7日の58.58ペソ以来、1年半以上ぶりの安値となっています。4月は債券や株式への投資意欲が低かったものの、5月の回復は、8月のBSPによる政策金利の引き下げ期待と、第1四半期の予想を上回る企業収益が下半期の好調さを示唆しているとみられています。

※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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