(写真はイメージです/PIXTA)

中国政府は、不動産不況で売れ残っている住宅を地方政府が買い取ることを許可した。このような状況を見越してか、地方政府では当該市以外の出身者が住宅を購入した場合、当該市の戸籍を付与するとした政策の導入が広がっている。ニッセイ基礎研究所の片山ゆき氏が解説する。

南京市の戸籍取得方法…高度人材

 

 

南京市もこれまで戸籍取得の緩和をしており、2017年からポイント積立制度を実施、戸籍取得の条件を順次緩和している。ただし、その条件は多岐にわたっている。これまで南京市以外の出身者が戸籍を取得するには大きく分けて(1)高度人材、(2)ポイント積立、(3)市が指定した地域への申請がある。今回これに(4)住宅購入が加わった形だ。

 

これまで実施されていた高度人材による申請は、大学卒業以上の学歴または高度な技術を持つ45歳以下を対象としており、南京市が必要とする人材を優先している点がうかがえる(図表2)

南京市の戸籍取得方法…ポイント積立

 

また、南京市が定める高度人材に該当しなければ、基本条件を満たした上で、ポイントを積み立てることで戸籍を取得する方法がある。ただし、申請条件は高度人材よりも厳しい。まず、南京市が発行した江蘇省居住証を取得していること、南京市内で安定した職業についていること、刑事事件で重大な罪を犯していないことが基本条件となっている。その上で、社会保険の加入期間、居住期間による基本点に、居住環境、年齢、婚姻、兵役、学歴、技能、納税など13項目の加点で点数を積み上げ、合計100点(以上)にならなければ申請ができないのだ(図表3)。加点のみならず、違法行為や処罰を受けた場合は減点されることになる。

 

また、市が指定した地域への申請については、6区(江北新区、江寧、浦口、六合、溧水、高淳)に限って戸籍が取得可能となる。申請には、同6区の住所が記載された江蘇省居住証、南京市で連続6ヶ月以上都市部の会社員向けの社会保険に加入していることが条件となっている。

 

このように、従前の取得方法には、高度な技能や学歴、年齢などの制限があり、高度人材でない場合は南京市内での居住、就業や社会保険への加入が前提とされてきた。今般の住宅購入による緩和措置はこういった居住、就業、社会保険といった規制をなくし、幅広く住宅購入、居住を募ることとなる。これまで厳しく設けていた条件をなくしたところに、地方政府の不動産不況に対する危機感を感じる。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2024年6月3日に公開したレポートを転載したものです。

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