「特定の発注先」に偏ることを避ける
全社の目標となる「必要粗利益額」、そして「利益率」を設定したら、向こう3カ年の具体的な数字に落とし込んだ「経営計画」を作成する。
「経営計画」といっても難しいものを作る必要はない。決算書ベースの数字をもとに、自社に必要な範囲で組み立てるだけである。今後の会社には、明確に目標とするべき全社の設計図となる数字の基本軸が必要だからだ。
売上は先ほど述べたように前年並み、あるいは過去3年の平均などでよいが、公共工事と民間工事の割合には注意が必要だ。公共工事は年度によって発注量のアップダウンが大きく、依存率が80%以上は危険である。できることならこの機会に、公共工事は売上全体の60%程度にまで抑え、他は民間工事でカバーするようにしたい。
もちろん、民間工事も受注先のバランスが大事なので、特定の発注先ばかりに偏ることを避けた上で、この機会に顧客基盤の拡大を目指していただきたい。
他人に任せず、自分で描く「長期的な見通し」
なお、私はこの段階でさらに数字のポイントだけを押さえた、10年計画や15年計画を作成することもある。これは主に、金融機関との交渉に必要なものだ。現状の借入金をどのように返済していくか、長期的な見通しを示すのである。借入金が多い場合、長期的な視野が持てず、逆に目先の資金繰りに終始し、さらなる苦境に陥ってしまうというケースが目立つ。
それを避けるには、今どれくらいの利益を上げれば、何年先を目途に借入金をどれくらいまで減らせるのか、という絵を自分で描かなければならない。作業としては難しいことではないにもかかわらず、そういった絵を描こうとする経営者は少ない。そして、その作業を金融機関の担当者や、都道府県の機関に頼るケースも少なくない。自分たちの借入金である。自分たちで考え、その上で各機関と交渉するのが基本ではないだろうか。
いずれにしても3カ年の「経営計画」において「必要粗利益額」が達成できれば、全額か一部かは金融機関との交渉になるが、元金を据え置いていた場合、元金の返済も開始しなければならない。その見通しをもとに、借入期間や金利についてさらなる交渉を行うことも必要になるだろう。
【図表 3カ年「経営計画」のサンプル】