「価格勝負中心」から脱却するには?
会社として「必要粗利益額」は何としても成し遂げなければならない目標であり、そのためには価格勝負中心の営業戦略の見直しが必要になる。
価格勝負中心の営業から脱却することは容易ではない。しかし、現時点で数字が伸びない各社は、本当に最低限必要な営業が皆できているだろうか。
営業の数字が伸びない会社の営業担当者と話をした場合、ほぼ100%、競合相手の価格が安くて当社では勝てない旨の話をしてくる。「あそこの会社の金額はいつも安すぎるから金額で負けている」と。
営業相手との信頼関係は簡単に築けるものではない。しかし、最低限必要な押さえどころはあるはずである。それすらも押さえずに、ただ言われるままに見積もりを出して、時機を逸してから確認に行き、「いつの間にか失注していました」「相手は価格が安かった」などは、手抜き営業の言い訳以外の何ものでもない。
ここで、営業で最低限必要な事項を挙げておく。
〈見積もり依頼を受けたとき〉
①その案件の納期・工期はいつか?
②その得意先が受注している工事かどうか?
③予算はもう出ているのか?
④何社くらいに見積もりを出しているのか?
⑤他に見積もりを出している会社はどこか?
〈見積もりをするとき〉
①ただ単純に積算してはいけない(公共・民間を問わず入札物件関連では)
②金額次第で自社に来る可能性がある物件は、原価の底値を出す
③ギリギリの底値の原価をもとに、3段階程の提出価格を設定する
〈見積もりを出すとき〉
①第1段階の金額で様子を見て、近いうちに決めそうな場合は第2・第3段階の見積もりも必要に応じて出す
②他社の提出状況などの様子を聞く
③先方の状況も踏まえ、いつ頃取り決めをする予定なのかを聞く
④どうすれば自社に発注してくれるのかを聞く
上記はすべての会社やすべての状況、また、すべての相手に通じるものではもちろんない。言い方にしても、そのままのセリフを言えばいいというものではない。
予算なども相手が本当のことを言ってくれるはずはないし、競合相手の金額については実際より安く言ってくるに決まっている。それでも聞くのである。
上記の中で、〈見積もり依頼を受けたとき〉の全部、〈見積もりをするとき〉の②③、〈見積もりを出すとき〉の②③などは言い方もテクニックもなく普通に聞けるはずであり、聞かなければならない。
【図表】「営業戦略」の見直しのポイント
見積もり提出後、先方から指値が来たら一発で決める
自社が受注する可能性が著しく低い物件、工期がまだまだ先で参考金額程度の物件などに全身全霊をかけた積算や見積もりなどは必要ない。会社としては、期の利益数字を追いかけるにあたり、その現場の竣工が今期か来期か再来期かも分からないと本気で勝負してもいいかどうかも分からない。「営業ならこの程度のことは誰でも分かっているだろう」と経営者や様々な機関の人などは思うだろうが、実際はそれができていないのである。
私は顧問先全ての営業会議に参加しているが、会議当初は上記の基本的な確認ができていない営業担当者の多さにいつも驚く。
皆できていないというより、していないのである。よって無駄な見積もりが多く、受注したいと思っても既に他社に取られた後だったりする。
上記の最低限の確認をさせた上で、月次または週次の営業会議、あるいは毎日の営業ミーティングで、上司が金額を含めた上記のような指示を出していけば、受注確率は飛躍的に上がる。これだけで上がる。
見積もりに対する受注確率は、各社の業種や見積もりの内容によって様々だろうが、例えば自社の受注確率が従来10%であれば12〜13%にはなる。これは単に2〜3%程度のアップではない。10に対しての2〜3なので実質は20〜30%のアップとなるのである。
見積もり提出後、先方から指値がきたら一発で決めるべく必ず上記のように準備をしておき、その場で勝負をかける。「持ち帰って検討します」では遅い。そのためには、事前にギリギリ利益が出るであろう本当の原価をきちんと営業部門、工事部門が連携して確認しておかなければならない。いずれにしろスピードと情報、そして最後に事前準備がカギを握るのである。